既存政治家の倫理の腐敗が目立ち、悪化する一方で、治安への不安が高まる中、軍関係者たちの政界進出の動きが加速しており、13日付現地紙が、10月の統一選では「行政府」(大統領、副大統領、州知事、副知事)への立候補者少なくとも25人が軍関係者」と報じている。10月には連邦議員、州議会議員選挙も行われるが、これらは「立法府」で、今回のデータには含まれていない。
「軍関係者」には、現職、元職の軍人、軍警、消防士が含まれる。
今年の立候補者数25人は、13人だった前回14年選挙と比べるとほぼ2倍、7人だった前々回10年選挙との比較ではほぼ3・5倍だ。
25人は、各政党から発表されている全ての立候補者数の7%に相当する。14年選挙では3%だったが、立候補者の正式決定は15日のため、この数値は変動する可能性もある。
一口に「軍関係の立候補者」と言っても、タカ派、保守派で、軍関係立候補者の象徴的存在、大統領候補のジャイール・ボルソナロ氏(自由社会党・PSL)やその支持者のような候補ばかりではない。左派政党からの立候補者もいるからだ。
ブラジルでは昨年1年間で世界最多の6万3千人以上が殺されるなど、治安対策は今年の選挙での重要な争点の一つだ。
陸軍のエドゥアルド・ヴィラス・ボラス司令官は、「軍関係者たちは、治安の乱れを見かねて立候補している。世論調査でも、政治家や教会、法曹界、官僚より、軍への信頼度は高い」と語る。
立候補者25人中6人は、陸・海・空の三軍の中で最も政治力の強い陸軍出身だ。海軍、空軍出身は1人もいない。残りは17人が軍警、2人が消防出身だ。また、立候補者25人中、大統領選に出るのは、陸軍退役大尉のボルソナロ氏と、同氏の副候補の退役陸軍大将、ハミルトン・モウロン氏、さらに9日のTV討論会で、「ブラジルの問題は愛が足りない事」と発言した元消防隊伍長のカボ・ダシオウロ氏(愛国者党)の3人だ。
残る22人は州知事候補か副知事候補として立つ。リオ州では、労働革新党(PRTB)が、知事、副知事の双方の候補に軍警を擁立した。サンパウロ州では、女性軍警3人が、別々の知事候補と組んで副知事候補として出馬している。
現地紙はまた、「ボルソナロ支持であろうと、なかろうと、軍関係立候補者に共通するのは政治経験の少なさ」と指摘。さらに、「軍警でありながら左派」のセルジッペ州知事候補マルシオ・ソウザ氏(自由と社会党・PSOL)の、「人々は私の職業だけを見て政治志向を決め付ける」との言葉も紹介している。