2011年から2017年までの6年間で、ブラジルでは、精管結紮切除術(パイプカット)の年間実施件数が4万700件から5万8千件へと、42・5%も増加した。その背景には経済的理由があるとされている。
この現象は、公立病院でも私立病院でも変わらない。ブラジル国民が無料で治療を受けられる統一医療保健システム(SUS)では、実施件数が3万600件から3万6700件に、20%増加した。また、民間医療保険がカバーして行われるパイプカット手術の件数は倍増して、2万1200件となった。
また、SUSを管轄する保健省の持つデータでは、手術を受ける人が高齢化していることも分かる。最新のデータによると、手術を受けた人が最も多かったのは35~39歳の年齢層だったが、2015年までは30~34歳だった。
ブラジルでは妊娠中絶が原則禁止されており、マスコミは、この現象を家族計画の観点から分析した。
「パイプカット手術の増加は、男性側が家族計画への責任を担い始めていることの表れだが、家族計画の問題においては、未だに女性の方が男性よりも多くの責任とリスクを背負っている。2017年に不妊手術を受けた女性は8万3千人おり、男性のパイプカット件数5万8千人よりも2万5千人も多い」と伝えている。
ブラジルの医療制度改定によりパイプカット手術が受けやすくなったことも件数増加の一因だが、ある専門家は、「経済的な要因も関係している。パイプカット件数の増加時期はブラジルの不況期と重なる」と語っている。
前の妻との間の子供が2人いる状態で、2人の連れ子がいる女性と再婚した男性は、その女性との間に立て続けに2人の子供が産まれた後、経済的な理由からパイプカット手術を受けることを決断した。
ブラジル紙は、泌尿器科医の、「離婚や再婚が珍しくなくなり、男性側が家族計画についてより真剣に考えなくてはならなくなった。パイプカット手術を受けた後に再婚し、子供が欲しくなる例もある。再接続手術で確実に受精機能を回復できるとは限らないので、手術を受ける人は、ちゃんと考えて決断しなくてはいけない」との言葉も紹介している。(15日付フォーリャ紙より)