治安の悪化に苦しむリオ州には今年2月に、ブラジル連邦政府による、治安部門限定での直接統治令が出されている。
これは州の自治権を一部制限する特例措置で、現在は、連邦政府が派遣した、直接統治令の執政官、ブラジル陸軍大将、エドゥアルド・ブラガ・ネット氏が、リオ州知事に代わって治安政策の主導権を握っている。
発令から半年が過ぎ、年内までという期限も近付いてはいるが、なかなか目に見える改善効果が見られない中、リオ市に展開している陸軍が20日の朝から、4200人以上の兵士と70人の市警を動員して、リオ市内の三つの大型ファヴェーラ(スラム街)、ペーニャ、アレモン、マレーに侵攻した。目的は地域を支配する犯罪組織の掃討だ。
これらの三つのファヴェーラはリオ市北部にある。同じく市内北部のゴベルナドール島にある国際空港から、コパカバーナ、イパネマなどの観光地に車で行くためには必ず近くを通らねばならず、観光客にとっても全く他人事ではない。
三つの大型ファヴェーラ内には細かく分けて26の小規模スラム街がある。スラム街といっても、そこで普通の生活を送る市民も大勢おり、その数は55万人だ。
直接統治令のためにリオ州に入っているブラジル陸軍東方軍(CML)は、「今回の作戦は三つの大型ファヴェーラから犯罪組織を追い出すために必要だった。現地に住む住民など、無実の市民には一切の損害は出ていない」と発表した。
20日午後4時の時点での発表によると、この作戦で兵士1人が死亡、1人が負傷、犯罪組織の構成員と思しき5人が死亡、36人が逮捕された。また、4個の手榴弾、24丁の火器、銃弾828発、銃弾装填用のキット6個、552キロの薬物を押収、盗難車3台も取り戻された。
リオ州軍警もこの作戦に参加したが、軍警の人数は発表されていない。また作戦には装甲車やヘリも使われた。
マレー地区からは、市内西部へと続く幹線道路、リーニャ・アマレーラが走っているが、作戦の最中にそこでバスが炎上する事件が起きた。
処理にあたった軍警は、「我々を阻むために犯罪組織が地元住民を脅してやらせた」と発表。軍や警察に反感を抱いた住民が、犯罪組織を利する行動を取ったわけではない事を強調した。
住民たちは朝から鳴り響く銃声に、家から出て学校や仕事に行くこともできず、不安な時をすごした。電話取材に応じた住民の一人は、「銃撃戦は朝の4時頃から始まった。住民は怖くて家から出られない。家に閉じこもって、頭を伏せていなきゃいけないなんて、まるで自分たちが囚人みたい」と語った。(20日付G1サイト、アジェンシア・ブラジルより)