ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル高等裁》=年金受給増額の条件を拡大=政府の負担は年間35億レアル増=最高裁に控訴の可能性も

《ブラジル高等裁》=年金受給増額の条件を拡大=政府の負担は年間35億レアル増=最高裁に控訴の可能性も

社会保障関連手続きに並ぶ人々(参考画像・Antonio Cruz / Agencia Brasil)

社会保障関連手続きに並ぶ人々(参考画像・Antonio Cruz / Agencia Brasil)

 これまで、病気や事故で働けなくなって「傷害年金を受けていた人」(aposentadoria invalidez)だけは年金額が25%加算されていたが、連邦高等裁(STJ)は22日、判事投票5対4で、この権利を「常時介護が必要な受給者」(aposentadoria de assistecia permanente)にも広げる決定を下したと24日付エスタード(E)紙が報じている。

 これによる国立社会保険院(INSS)の負担増加は、年間35億レに達すると予測される。政府は社会保障負担が大きくなりすぎと感じており、経済政策スタッフからは「社会保障費を削りたい政府の方針と真逆」との声もあがっている。

 今年のINSS収支は、2016億レの赤字となる事が濃厚。テメル政権が社会保障制度改革に失敗した今、将来的にも増え続ける見込みだ。

 一般労組(UGT)内部の年金・恩給受給者・高齢者組合のナタル・レオ会長は、「高齢年金受給者の中には受給開始後に後遺症が残った人、自分で動けなくなった人が沢山いる」とし、25%増額の対象になりうる人や増額を求める人の数は膨大だと語っている。同会長は、23日だけでSTJの決定に関する質問の電話を5件も受けたとしている。

 しかし、同会長は「常時介護が必要な受給者であることを証明するには医師の診断書が必要。だが診断が全て適切に行われるかは疑問だ。必要な人が増額を受けられず、そうでない人が増額される事にならなければ良いが」と語っている。

 INSSは、「常時介護が必要な受給者」の例として寝たきりの病、全盲、両腕、もしくは両脚が使えない状態、重度の精神疾患を上げている。

 25%の増額は、5645・8レ/月の上限まで社会保障を受けていた人にも適用される。法定最低賃金の改定などで、年金額が増額調整された場合も同じように増額されるため、なおさら政府の心配も大きくなる。

 STJは、増額の権利を新たに得る人の法的基準を厳密に定めたわけではないので、介護を受けている年金受給者による増額申請が殺到する可能性もあるとE紙は警鐘を鳴らす。

 STJでは、判断待ちの社会保障関連訴訟がたまっている。社会保障に関する規定は連邦法で定められているため、判断はSTJが下すが、憲法解釈にかかわる部分がある場合、政府は最高裁(STF)に訴える事も出来る。

 連邦政府の法的代弁機関、総弁護庁(AGU)とINSSはSTFへの控訴も検討している。