最高裁第1小法廷は28日、大統領候補のジャイール・ボルソナロ氏(社会自由党・PSL)が行った発言が憲法の定める人種差別に当たるとの起訴状を受理し、同候補を被告にするか否かの投票を行ったが、アレッシャンドレ・デ・モラエス判事が「票の見直し」を求めたため、結論が1週先延ばしにされた。31日の大統領選政見放送開始前に無罪を勝ち取りたかった同氏には不利な結果となった。28日付現地サイトが報じている。
この裁判は、ボルソナロ氏が昨年4月にリオ市のユダヤ人協会で行った演説で「原住民がダム建設に反対している」「キロンボなど社会の役にたちはしない」「彼らの保護区など1センチたりとも作らせやしない」と語った件に関するものだ。連邦検察庁は4月にボルソナロ氏を、人種差別を行ったとして起訴していた。
最高裁は当初、9月4日に起訴受け入れか否かの審理をするはずだったが、ボルソナロ氏の願いで1週間前倒しされた。同氏としては、早く審理を行って無罪となれば、31日から始まる政見放送などで、他候補からこの問題を突かれずにすむからだ。
この裁判は、当初はボルソナロ氏に有利に進むかに見えた。報告官をつとめたマルコ・アウレーリオ・メロ判事が「ボルソナロ氏があの演説で最も強調したかったのは連邦政府の政策批判であり、人種差別が目的ではなかった」としたからだ。ルイス・フクス判事も「個人の意見を封じるのはよくない」として、これに賛成した。
だが、ルイス・ロベルト・バローゾ判事は「この発言に人種差別の痕跡は認められる」「この発言が認められれば人種差別犯罪を刺激するだろうし、同性愛者差別犯罪が起こっても〃表現の自由〃で許されることになりかねない」と反対した。これにはローザ・ウェベル判事も同調した。
モラエス判事は最後の1人となった時点で「起訴内容の見直し」のための時間を要請。これにより、審理は1週間先の9月4日に延期された。これにより、ボルソナロ氏のもくろみは崩れ、政見放送ではこの件に関する他候補からの言及が避けられなくなった。
ボルソナロ氏は既に、マリア・ド・ロザリオ下議に対して行った「レイプの価値さえない女性」との発言で、不敬罪と扇動の容疑で二つの裁判の被告になっている。この28日もグローボ局にインタビュー出演した際、「女性の給与格差」を肯定する発言を行い、女性キャスターのレナタ・ヴァスコンセロス氏と口論となっている。
ボルソナロ氏の諸々の差別発言や軍事政権肯定発言などを巡っては、国連のザイド・イブン・ラアド人権高等弁務官からも「きわめて危険」と問題視する声が出ている。