「島根県人会を通して、安来節を世界に広めたい!」―安来節家元の渡部お糸さんが4日に来社し、そう熱く語った。今回は安来節の一種である銭太鼓を、これを機に発足した県人会青年部に1、2日の二日間指導した。これは、総務省の「中南米日系社会と国内自治体との連携促進事業」の一環。ほかの県人会でも使えそうな有用なプログラムだ。
家元は「高知県の地方民謡だったよさこいは、YOSAKOIソーランとなって、ブラジルでも大会が開かれるなど世代と地域を越えて広がっている。それに負けないよう、ぜひ安来節も世界にひろめたい」との溢れる思いを語った。
銭太鼓は長さ30センチの筒の中に5円玉が複数入っている。安来節に合わせて、床や机にぶつけて太鼓のように音をさせ、拍子を取る芸能だ。家元は「南米の方はリズム感がいい。たった二日間の練習なのに、2年間ぐらいやっているような感じの人もいた。驚くほど早く基本を憶えてくれた」と手ごたえを語った。
家元は「安来節のなかでも銭太鼓は賑やかで活気のある踊り。少ない人数でも何千人でもできるし、場所もお座敷から舞台までどこでもできる」との特徴を説明した。家元来伯は今回3回目。40年前、10年前の百周年でも来ていた。今回は10日間滞伯し、4日帰路に付いた。
家元に同行した県庁環境生活部文化国際課の美藤圭介主任主事によれば、元々は、後継者不足に悩む県人会の方から「青年部を作りたい。なにか活動の柱になるものを教えてほしい」という要請が県庁にあった。
それに応えて、県庁が総務省の「中南米日系社会と国内自治体との連携促進事業」に応募して承認され、家元訪伯が実現した。美藤さんは「これをきっかけに県人会を活性化させてほしい。ぜひ継続させて」と期待する。
村上アンドレー光明県人会長は、「青年部はこれから毎週集まって銭太鼓を練習する予定。実は20年前までは銭太鼓をやっていたが、その後、廃れていた。これを機会に青年部を創立し、活動を活発化させたい」と意気込んだ。
今回、郷土料理専門家も来伯し、婦人部に名物の出雲ソバを打つなどの料理指導を行った。村上会長は、「日本祭りで出せる郷土料理を探していたので、ちょうど良い。ほんとうにありがたい」と喜ぶ。
他の県人会でもこの制度を通して、活動を活性化させる取り組みが期待できそうだ。