ブラジル連邦政府は5日、平均5%値上げされた貨物輸送の最低運賃の価格表を官報に掲載した。最低運賃の調整は国家陸路輸送庁(ANTT)が担当しており、政府関係者とも協議した後に官報掲載となった。5、6日付現地各紙・サイトが報じている。
5月のトラックストで運転手たちが主張した、「輸送費が安すぎる」との声を呑む形で、連邦政府は「貨物輸送の最低運賃価格表を制定する」と発表していた。それまでは、まったくの市場価格だった。
最低輸送運賃は、輸送する品物の種類や、輸送距離によって料金が個別に定められている。政府は一斉に同じ比率で上げたわけではなく、価格上昇比率の平均値が5%だ(フォーリャ紙は平均3%と報道)。
最低運賃の値上げは、先月31日にペトロブラス社がディーゼル油価格を平均13%引き上げたことに関連している。燃料値上げにより、輸送コストが上がり、困窮していると、輸送業者は語っていた。
ただし、最低運賃値上げ反対勢力の動きも早かった。値上げが発表された5日当日に、農牧連合(CNA)は、以前から行っていた、法定最低運賃が違憲ではないかとの申し立ての動きを強め、全国工業連合(CNI)も「司法の迅速な判断を期待する」との声明を発表した。
最高裁のルイス・フクス判事は6月に、最低運賃の合憲性に関する最高裁の判断が出るまで、最高裁より下級の裁判所での判断を差し止めている。
トラック輸送を利用する農業界や工業界は、運賃をできるだけ安く抑えたいと思っており、「最低運賃が値上げになれば、販売価格に上乗せせざるを得ず、被害を被るのは国民」との運賃値上げ反対論を展開している。
全国穀物輸出業者協会(Anec)は、来年1年分の輸出にかかる予想追加コストを40億ドルから50億ドルへと上昇させた。「生産サイドにも、輸出業者にも、国内輸送コスト増を相殺、中和する手段はない」と、Anec幹部は語る。
最低運賃価格表ができる前と比較すると、マット・グロッソ州ソリーゾ市からサンパウロ州サントス市までの大豆の輸送費は57%も上昇したとCNAは計算している。
ブラジル植物性油製造業者協会(Abiove)のアンドレ・ナッサル会長は、「政治的理由で最低運賃の引き上げが行われているのではないか。また、我々は連邦政府がこうしたやり方をズルズル続けるのではと危惧している」と語った。
パラナ州ポンタ・グロッサ市の独立運送業者組合会長のネオリ・レオベ氏は、トラック運転手たちの間では最低運賃価格表制定は懸案事項一つに過ぎず、「政府は最低限すべき事をしただけ」と語る。
最低運賃を遵守しているかどうかの監査は不足しており、トラック運転手たちは安心していられない。9月12日に国家陸路運輸庁庁舎前で計画されていた最低運賃監査強化を求めるデモは、そのまま実行される予定だ。