国境を接するベネズエラからの移民や難民が大量に流入中のロライマ州で、ブラジル人市民を殺したベネズエラ人が、市民から袋叩きにされて死亡するという事件が起き、再び緊張が高まっている。
8~10日付現地紙やサイトによると、事件が起きたのは、同州州都のボア・ヴィスタ市西部のジャルジン・フロレスタ区で、6日午後7時前、ベネズエラ人約300人が住むファヴェーラ(スラム街)のそばの店で、ベネズエラ人3人が万引きをしたという。
店主は気付かぬふりをしようとしたが、店の外に出た3人が腰に凶器を帯びている事に気付いた市民が「泥棒だ」と叫んだため、店主を良く知るマノエル・シケイラ・デ・ソウザ氏(35)が自転車で後を追いかけ、19歳の少年に追いついた。2人が争いとなった時、逃げようとした少年がソウザ氏の首筋に切りつけたという。ソウザ氏は病院に運ばれたが、死亡した。
ソウザ氏と共に少年らを追っていた市民がこれを見、少年を捕らえて袋叩きにしたため、少年も死亡。遺体はファヴェーラの前に投げ捨てられたという。万引きをした3人の内、2人は見つかっていない。ファヴェーラの住人によると、少年の名前はホセ・ゴンサレスで、1年前から同州に住んでいたという。
ボア・ヴィスタ市内では事件後、市民とベネズエラ人との間の緊張が一段と高まったため、国家治安部隊(フォルサ・ナシオナル)なども巡邏活動を続けたが、9日未明に軍兵士がベネズエラ人収容作戦を実施。強い雨が降る午前4時頃、成人や子供も含むベネズエラ人約200人が、仮設キャンプから、連警本部に近い適格審査センターに移された。
軍の報道官によると、同作戦は事件前から予定されていたもので、収容された人達の所持品は全て、一旦登録した後にバスでセンターに運ばれたという。同センターでは身分証明書の更新作業や医師による健康診断が行われ、食料や衛生用品も支給される。
なお、10日の国連での発表によると、17年の統計では、ベネズエラには栄養失調者が人口の11・7%に相当する370万人おり、3・6%だった11年の90万人の4倍以上になった。
同国大使は、国連が同国への制裁決議を採択するのを避けるため、同国での人道危機は、諸外国がマドゥーロ政権に対して採った経済制裁の結果だと主張している。
同国の今年の石油生産量は日産140万バレルで、チャベス氏存命中の12年の240万バレルと比べ、大幅に減退。今年の国内総生産(GDP)は18%縮小、インフレは100万%と見られており、GDPが5・6%成長し、インフレも21%だった12年とは雲泥の差となっている。