選挙の行方が不透明な事などで、ブラジルが抱える負債に対するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)指数が倍になり、新興国の中でもより深刻な状況と13、14日付現地紙が報じた。
CDSは、社債や国債などの信用リスクに対する保険ともいえるデリバティブ契約だ。債権者や投資家は、保証料を払う事で、契約対象となる債権が債務不履行(デフォルト)になっても、元本や利息などの損失を保証される。売り手は保証料を受け取る代わり、債務不履行時は買い手に対し損失分を払う。
ブラジルのCDS指数は1月の時点で140ポイント(P)だったが、8月には310Pまで上昇。現在は282Pだが、それでも1月の倍だ。新興国中、ブラジルの指数を上回るのは、アルゼンチンの700Pとトルコの500Pのみだ。
アルゼンチンとトルコはブラジル同様、米中の貿易戦争や国内事情で為替が急騰中だ。13日付エスタード紙によると、アルゼンチンでは今年、ドルが103%、トルコも68%値上がりした。ブラジルは年初に1ドル=3・20レアルだった。これに対し、14日付G1サイトは、13日のドルは4・2046レアルに達した後、4・152レアルで閉じ、26・61%高と報じた。
ブラジルのCDS指数上昇は、選挙の行方が混沌とし、今後の経済政策が見えない事が主要因だ。元中銀総裁でコンサルタント会社テンデンシアス共同経営者のグスターヴォ・ロヨラ氏は、「CDSや株式市場の指数改善は、大統領が決まり、投資家に新政権の経済政策が見えてきた時」で、「先行き不安だと、市場は自己防衛的な動きとなる」としている。
市場が特に懸念するのは、ブラジルが抱える財政赤字だ。現時点での赤字額は国内総生産(GDP)の約80%で、新興国平均の50%を大きく上回る。市場関係者は、現在の財政赤字では持続可能とはいえず、新大統領が財政改革を断行しない限り、国際的な信頼を取り戻すのは困難だという。
例えば、シロ・ゴメス氏(民主労働党)は支出上限法撤回を訴え、フェルナンド・ハダジ氏(労働者党)は社会保障制度改革を拒否。支持率1位のジャイール・ボルソナロ氏(社会自由党)は連立が組めず、統治能力不足を案ずる声が強い。
14日付フォーリャ紙には、ハダジ氏躍進を恐れ、13日のドルは4・197レに到達とある。同エスタード紙は、ボルソナロ氏の再手術の報道と支持率調査の結果発表でドルは4・1998レで閉じたと報じた。14日もドルは一時的に上がったが、午後5時の値は4・1669レで、0・67%下がった。
国際的な信用格付会社がブラジルを投資資格ありと評価した、08年のCDS指数は100前後だった。