労働者党(PT)への嫌悪感がジャイール・ボルソナロ氏(社会自由党・PSL)の支持率上昇の原動力となり、その影響で民主社会党(PSDB)のジェラウド・アウキミン氏の支持率が落ちていると、16日付エスタード紙が報じている。
イボッピ(ブラジル世論調査・統計機関)の最新世論調査では、「何があってもPTの候補には投票しない」と答えた人が約30%いた。イボッピは、その人たちが誰に投票する意向かも調べ、その内訳を発表した。
9月11日の調査の時点で、反PTの人の53%はボルソナロ氏に投票すると答えている。9月5日の調査の時点では41%だったから、12%ポイントも跳ね上がったことになる。
ボルソナロ氏に投じると答えた人の急増は、6日に暴漢に刺されて負傷し、さらに11日は、PTが正式にルーラ元大統領の出馬を断念し、党公認の大統領候補をフェルナンド・ハダジ氏に交代した日であったからだ。
とりわけ、刺傷事件の影響は大きい。犯人のアデーリオ・ビスポ・デ・オリヴェイラ容疑者は2007~14年に社会主義自由党(PSOL)に所属しており、PTとは直接関係していないが、「左翼陣営がボルソナロ氏を殺そうとした」との気持ちが強くなっているからだ。
ボルソナロ氏に対する反PT派からの支持の高さは、ブラジルに20年以上前から定着していた「PT対PSDB」の対立図式を壊す可能性が高い。現時点では、PSDBのジェラウド・アウキミン氏に投票したいと考えている反PT派はわずか9%にしか過ぎない。5日の時点でも11%しかなかった。
ブラジルの大統領選一次投票では、1994年の統一選挙以来、6回連続してPTとPSDBの候補が1、2位を占め、決選投票を戦ってきた。
また、反PT派でマリーナ・シウヴァ氏(REDE)に入れたいと考えていた人は9%から5%に下がり、シロ・ゴメス氏(民主労働党・PDT)に入れたかった人も7%から5%に下がっている。
反PT派の分布を見ると、50%は南東部、19%は南部在住者だ(同地域の有権者は全体の44%と15%)。学歴別では、43%が高卒(有権者全体では41%)、32%が大卒以上(同22%)で、高学歴者ほど反PT傾向が強い。所得別では、33%は最低賃金2以上~5未満(全体の27%)、24%は最賃5以上(全体の14%)で、高所得層ほど反PT傾向が強い。
出馬無効となる前のルーラ氏は、支持率が40%近かったが、拒絶率も50%前後と高かった。ボルソナロ氏の拒絶率も、現時点で40%超と他の候補を抜きん出ている。ハダジ氏の拒絶率はまだ20%台で、そこまで高くはないが、支持率上昇と共に、「ルーラ氏の後任」ということで拒絶率の上昇が考えられる。だが、現状では、その拒絶率の高い2勢力の間に入る第3勢力が見えない状況でもある。