アルゼンチンの裁判所が17日、前大統領のクリスチーナ・キルチネル上議(65)を「組織犯罪の長」と断定し、一時逮捕令状などを出した。18日付現地紙が報じている。
逮捕命令を下したのはクラウディオ・ボナディオ判事で、クリスチーナ氏は2003~15年、アルゼンチンでの公共事業を請け負った、同国を代表するゼネコン企業などから巨額の賄賂を受け取っていたとされる。同判事によれば、同国ではこの時期、公務員も絡んだ組織的な贈収賄工作が行われており、「計画犯罪を率いた」のはクリスチーナ氏だという。
クリスチーナ氏は現在上院議員で、不逮捕特権があるが、同判事は上院に特権剥奪を求めた上で逮捕令状を出し、40億ペソ(1億ドル)の資産凍結も言い渡した。
アルゼンチンでは、上院議員の特権を剥奪するためには上院の3分の2以上の賛成を得なければならないが、これは実現不可能とみられている。クリスチーナ氏はこれで5件目の起訴となるが、この特権により、常に逮捕を逃れてきた。
今回の事件は同国では「汚職ノート」と呼ばれている。クリスチーナ氏が大統領時代の副企画相ロベルト・バラッタ氏の運転手オスカル・センテーノ氏が所有していたノート8冊には、企業家や公務員の実名、住所などの詳細な情報と共に、その関係者らが定期的に集まっては、現金の山を詰めたカバンを持ち帰っていたことなどが記されていたとして、大きな話題を呼んでいる。
クリスチーナ氏は今回の件も含めて、八つの件で捜査を受けている。大半は汚職に関するものだが、中には1994年7月のアルゼンチン・イスラエル相互協会爆破事件の際、イラン政府の高官がこの事件に関与していた事実を隠蔽していた疑惑も含まれている。
今回の疑惑では、クリスチーナ氏以外にも、同氏の政権時の企画相、フリオ・デ・ヴィド氏などが訴えられている。