7月から8月にかけて、ブラジルでは、小麦粉や、小麦粉を使ったパン、麺類などが最大10%値上がりした。
小麦粉を使った商品を製造している業界が調べたもので、この値上がり幅は、7月から8月にかけての公式の物価上昇率(0・24%)を大幅に上回っている。
小麦を原材料とする商品の値上がりは、国内の小麦生産量が需要に追いつかず、需要の半分以上を輸入している影響が大きい。最近は、選挙の先行きが不透明な事などでドル高傾向が続いている上、アルゼンチン国内や米国市場での小麦値段が上昇している事が、小麦製品の値上がりに拍車をかけている。
ブラジルは今年、520万トンの小麦を生産する見込みだが、需要を満たせない分(630万トン)は輸入する必要がある。主な輸入先はアルゼンチンで、米国、パラグアイ、ウルグアイ、ロシアからも輸入している。
米国シカゴの株式市場での小麦価格は、8月に197・80ドル/トンを記録した。9月に入ってからは181ドル/トンに値下がりしたが、それでもまだ、1月の平均取引価格(158・91ドル/トン)より高い。
さらに、1~8月のドルは、レアルに対し、22・86%も値上がりしている。
業界関係者によると、7月以降の小麦価格上昇の影響が強く出ているのは、原料の60~70%が小麦の麺と食パンで、7~8月は約10%値上がりしたという。小麦粉の比率が30%程度のビスケット類は、5%前後の値上がりで済んでいるという。
国際的な小麦や小麦製品の値上がりやドル高傾向はまだ続いており、商品価格は下がりそうもないが、景気の回復が遅れている上に商品価格の引き上げが起きれば、消費の減退も招きかねない。このため、業者や小売店の多くは、小麦価格の値上がり分の全てを小売価格に転嫁する事を避けようとしているという。
また、9月にはパラナ州やリオ・グランデ・ド・スル州での小麦の収穫が始まる事も、これ以上大幅な値上がりを防ぐ事につながったという。
近年のパン業界では、人件費が平均で40・6%、電気代が14・4%、税金が15・2%上がっており、商品価格の上昇につながっていたが、これらの上昇分の全てが消費者価格に転嫁されている訳でない。
ブラジル国内には70万件のパン屋があり、4100万人が毎日のように利用している。直接雇用や間接雇用を合わせると、パン屋で働く人達は260万人に上る。
また、5月に起きたトラックスト後に導入された、輸送費の最低料金表も、原材料や商品の輸送経費増大を招いている。最低料金表導入による経費増大分をいつ、どの程度商品価格に上乗せするかはまだ検討段階だが、いつかは卸値や小売値に転嫁せざるを得なくなるというのが、業界側の見方だ。(14日付アジェンシア・ブラジルより)