大統領選などの争点の一つに治安問題が挙げられているが、サンパウロ大都市圏では、窃盗や強盗事件の増加と共に強盗殺人事件も増え、治安悪化との印象を市民に与えていると18日付フォーリャ紙が報じた。
サンパウロ市南部では9月5日に、57歳の女医が車を盗まれた上、警官接近に気付いた犯人が急に車を後退させたため、車に引っかけられ、約100メートル引きずられて死亡する事件が起きた。
また、サントアンドレ市とエンブ・ダス・アルテス市では8月9日と28日に、18歳の女性と19歳の青年が携帯電話を渡したのに胸や頭を撃たれて死亡した。
今年1~7月のサンパウロ大都市圏での強盗殺人は89件で、昨年同期より36%減った。この間の殺人事件は779件、強盗・窃盗事件は約14万5千件で、強盗殺人1件あたり1600件以上の強盗・窃盗事件が起きている。
だが、強盗殺人は通常の強盗・窃盗事件の0・1%にも満たないのに、市民に与える恐怖感や治安悪化との印象ははるかに大きい。これは、強盗殺人の場合は被害者のプロフィールを特定出来ない上、多くの市民は窃盗や強盗の被害に遭った経験があったり、被害者を知っていたりするため、いつ、どこで、誰が被害に遭っても不思議ではないという印象を受けてしまうのだ。また、強盗・窃盗事件の多発地区は強盗殺人も起こり易い。
サンパウロ市では、2014年に強盗・窃盗事件が前年比18%、強盗殺人が同5%増えて以来、常に、高い比率で事件が起きている。17年強盗・窃盗事件は前年比9%減だったが、それでも、10万人あたりの強盗・窃盗事件発生率は1528・4件とかなり高い。
専門家は、銃所持の規制や、未成年者が犯罪を犯した場合の社会再適応といった社会政策により、これらの事件の発生を抑える事が可能という。
一方、19日付現地紙によれば、サンパウロ市市民の48%は強盗・窃盗の被害に遭った経験があるが、届けを出さない人の方が多い。17年の場合、路上などで強盗に襲われたが届けなかった人は52%、窃盗事件の被害に遭ったが届けなかった人は64%いた。保険会社からの補償を受けるために届出が必要な車の場合は、届出をしなかった人が窃盗で22%、強盗で13%と少ないが、空き巣では78%、押し込み強盗の場合も59%が届けていないという。
窃盗は暴行や脅迫を伴わない万引きやスリ、置き引きなどで、犯行時や犯行後に暴行や脅迫を伴う場合は強盗となる。強盗事件の被害者が死亡した場合は強盗殺人(強盗致死)となる。