国連貿易開発会議(Unctad・本部ジュネーヴ)は15日に今年上半期の世界中の国外直接投資(FDI)の結果を発表。ブラジルは、投資先として、昨年上半期の6位から9位に転落したと15、16日付現地紙、サイトが報じた。
「直接投資」は、企業が、経営権取得のための株式購入や工場建設などにより、外国で直接事業を行うことを目的とした投資で、配当や、金利、転売益を目的とした「間接投資」と区別される。昨年上半期にブラジルに投じられた直接投資資金は326億ドルだったが、今年は22%減の255億ドルだった。
報告資料作成者の一人のリチャード・ボルウィン氏は、ブラジルについて、「先行き不透明感は投資を妨げる」と語り、「企業は投資先を決める際、その国の経済の現状や動向を考慮するが、実際に投資を行う段になると、政治的な不安定さも考慮に入れる」と続けた。今年のブラジルは、経済の回復が当初の予想より遅れている上、統一選挙が終了するまで、今後の政権担当者や今後の経済政策が確定しないため、投資の可否や規模を決めるのが困難な状態にある。
メルセデス・ベンツ(ドイツ本社)のブラジル支社長フィリップ・シーマー氏は、投資の促進を進言しても、なかなか本社に受け入れられない状況にあると語る一人だ。
同氏は、2022年までに予定されている24億ドルの投資は頓挫する事はないとしながらも、それ以降は保障されていないとしている。
大統領選決選投票に両極端の政治的志向を持つ2人が残り、中道候補が残らなかった事が残念とシーマー氏は語るが、どちらが勝った場合でも対応していく意向だ。
また、「直接投資22%減には、国内経済の回復の遅れの方が、選挙よりも強く影響しているのでは」とは、ブラジルグローバル経済・多国籍企業研究会(Sobeet)会長ルイス・リマ氏の見解だ。同氏は選挙の影響は今年の下半期に現れると見ており、「下半期は30%減、今年全体では前年比25%減」と予想している。
世界規模での下げ幅はブラジルの約2倍
ブラジルの下げ幅は22%だったが、世界全体の下げ幅はさらに大きい。
昨年上半期の世界の国外直接投資総額は7940億ドルだったが、今年上半期は4700億ドルで、41%減少した。
国際通貨基金(IMF)による世界経済全体の成長予想が下げられた事や、米国が税制改革を行い、米国企業が外国から資金を米国に送金する際の税金を引き下げた事もリマ氏は指摘。世界規模で国際投資の気運が落ちていると語っている。