ペルーのリマで開かれた痛みや緩和医療に関する会合で、ブラジルを含むラテン・アメリカ(以下、ラ米)諸国で、「オピオイド危機」のために、オピオイド医薬品を使った治療を拒否する例が出ている事を懸念する声が出たと17日付ブラジル国内紙が報じた。
オピオイドは、ケシから採取されるアルカロイドやその化合物を指し、医療現場ではその鎮痛作用を利用し、がんの疼痛のような強い痛みの管理を行っている。だが、オピオイド医薬品は依存症を引き起こす可能性がある上、過剰摂取に伴う昏睡や呼吸抑制などの重大事も起こりうる。
アルカロイドやその合成化合物は、モルヒネやヘロイン、フェンタニルなどのいわゆる麻薬に分類される。米国では薬物中毒死の43%がオピオイド医薬品の過剰摂取が原因で起きており、14年には頭痛や腰痛、繊維筋痛症といった慢性の疼痛では使用を控えた方がよいとの声明も出た。
だが、オピオイド医薬品の過剰摂取による死亡や昏睡事件は続き、米国では昨年、7万2千人が死亡した。この数字は前年比約10%増で、交通事故の死者なども上回ったため、トランプ大統領は公衆衛生上の「オピオイド危機」も宣言した。
だが、米国での薬物中毒死は、嘘までついて麻薬を処方してもらったりした市民が中毒化し、過剰摂取に陥った例が大半だという。
これを受け、リマの会議では、医師の知識不足でオピオイド医薬品の使用法を誤った場合の危険性やそれに伴う恐怖心、緩和医療関連の政策などが話し合われた。
ラ米諸国ではオピオイド医薬品の使用に懸念を示す政府や患者、家族が増えているが、アルゼンチンの緩和医療コーディネーターのニコラス・ダヴィドヴィクス氏は、ブラジルやラ米諸国でのオピオイド医薬品の入手経路は米国などとは違うので、強い痛みに悩んでいる患者は医師を信頼して治療を受けるようにと呼びかけている。
ラ米諸国緩和医療協会のタニア・パストラナ氏は、オピオイド医薬品に対する恐怖心のためにモルヒネなどの使用を拒否する患者がいる事を認めた上で、唯一の解決法は医療関係者や保健衛生の担当部署、市民への啓蒙活動だと説いた。
オピオイド医薬品の分布は格差が大きく、世界中で入手可能なモルヒネの94%は世界人口の15%を占める裕福な国が使用、それ以外の国が残り6%を分け合っているという。