2014年から今年の8月末までに外資に買収されたブラジル企業は398に上り、買収額は総額1330億レアルに上ると22日付現地紙が報じた。(「買収」には、一部資産だけの買収も含む。)
外資によるブラジル企業買収件数は14年80件、15年92件、16年75件と推移し、昨17年は108件だった。今年は8月末の段階で43件となっている。
今年8月までの月間平均は5・4件程度だが、大統領選の決選投票後もいくつかの買収が発表され、外資が存在感を示しそうだ。買収される可能性のあるブラジル企業のリストには、エンブラエル(航空製造)やブラスケン(石油化学)などの巨大企業も名を連ねている。
買収件数、総額などのデータは、世界中の企業買収や合併の情報をネット上で提供するトランザクショナル・トラック・レコード(TTR)が発表したものだ。
この流れは、ブラジル経済と国際経済双方の影響を受けている。14~16年に大型不況に陥ったブラジルは、17年以降も回復が軌道に乗らず、レアルも値下がり。他方、世界では資金の過剰流動が起き、ブラジル企業は格好の買収ターゲットとなった。
教育調査研究所(Insper)のセルジオ・ラザリーニ氏は、「今、世界では〃金余り〃が発生している。ブラジル企業が経営を続けていくためには、国外からの投資資金も必要だ」と語る。
同氏はまた、ラヴァ・ジャット作戦で汚職を暴かれた大企業が、負債を埋め、回転資金を作るために資産売却を余儀なくされた事も指摘した。建設大手オデブレヒト社が子会社のオデブレヒト・アンビエンタル社をカナダ資本に売却した件は、その一例といえる。
ブラジル企業を買収した企業を国別に見ると、米国(75件)、中国(23件)、フランス(22件)と続く。最近起きた米資本によるブラジル買いの一例には、穀物メジャーのアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド社による、Algar・Agro社(ミナス州本社)の油糧種子処理施設の買収などがある。
中国資本はブラジルのインフラ設備買収に積極的だが、大統領選の決選投票で優勢が伝えられているジャイール・ボルソナロ候補(自由社会党・PSL)はこれに難色を示しており、当選したら、特にエネルギー部門に関しては、中国資本の参入を制限すると語っている。
中国資本は近年、サンパウロ州電力(Cesp)やミナス電力(Cemig)の水力発電所や、パウリスタ電力(CPFL)の送電設備買収などに莫大な資金を投入している。
今年は既に、オーストラリアと米国が安全保障などの理由により、外資による投資を制限する方針を示しているが、「それは豊かな国だけがとれる方針。ブラジルには外資参入制限は無理」とする専門家の声もある。
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