ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》サルからもジカ熱ウイルス=野生型感染拡大の可能性は?

《ブラジル》サルからもジカ熱ウイルス=野生型感染拡大の可能性は?

野生のサルがジカ熱ウイルスを保持し始めた?(参考映像、Arquivo/Fábio  Massalli/Agência  Brasil)

野生のサルがジカ熱ウイルスを保持し始めた?(参考映像、Arquivo/Fábio Massalli/Agência Brasil)

 ブラジルや米国の研究者がサンパウロ州調査研究支援機関(Fapesp、財団)の支援で行った研究で、サンパウロ州やミナス・ジェライス州で死亡したサルの一部がジカ熱ウイルスに感染していた事が判明したと10月30日付アジェンシア・ブラジル、G1サイトなどが報じた。
 研究者達が扱ったサルの死体は、黄熱病流行が騒がれた際、黄熱病を媒介すると誤解した住民が射殺または殴殺したものや、犬にかみ殺されたものだ。死体回収時期は2017年前半で、サンパウロ州サンジョゼ・ド・リオ・プレットとミナス州ベロ・オリゾンテで回収した80の他殺体中、3割はジカ熱に感染していたという。黄熱病感染はゼロだった。同地域ではジカ熱ウイルスに感染した蚊も回収されており、そのウイルスは、ジカ熱に感染した人達から検出されたものと同型だった。
 研究者によると、研究対象としたのはサギまたはミコと呼ばれる種類のサルの他殺体だ。これらのサルは敏捷で、捕獲が困難だが、実験的に健康なサルをウイルスに感染させると、体が弱り、動きが緩慢になった。
 研究者達は、調査した他殺体は、ジカ熱にかかり、弱ったために容易に捕まり、殺されたと見ている。黄熱病に感染したサルは死ぬが、ジカ熱では死なずに回復する。ブラジルでは、セアラー州でジカ熱ウイルスに感染した野生のサルが発見された例があるが、南東部での発見は初めてだ。
 2015年以降に確認されたブラジルでのジカ熱患者は皆、ネッタイシマカが媒介する市街地型だったが、サンパウロ州やミナス州の野生のサルからもジカ熱ウイルスが発見された事は、ヤブカなどが媒介する野生型の感染も起こりうる事を示唆する。
 研究者達は、都市周辺部で起きた野性のサルへの感染の実態や、同様の感染が内陸部にある農村や森林地帯でも起きているかを調べ、感染した野生のサルを刺した蚊により、人間への感染や野生型の流行が起こる可能性の有無などを探る。野生型感染の可能性がある事が判明すれば、ジカ熱撲滅がこれまで以上に困難になるのは明らかだ。
 なお、2016年から始まった黄熱病流行による死者は、今年3月までの時点で676人、感染者数は2千人を超えた。