エスタード紙論説委員の保久原ジョルジ淳次さんが、父・正輝の生涯を描いたポ語記録文学『O Sudito: Banzai Massateru(臣民―正輝、バンザイ―)』(Editora Terceiro Nome、2007年)の日本語訳を本日から連載する。中田みちよさんと古川恵子さんが共訳した。
保久原さんは1966年にUSP工学部に入学し、政治活動に関係して2カ月ほど投獄された経験がある。その後、ジャーナリスト学科に入学しなおし、在学中に新聞社に入社してそのまま中退し、記者としての経歴を積み重ねた。
途中、サンパウロ州政府の広報官として4人の知事に仕えたが、再び新聞社に戻り、エスタード紙の看板たる社説頁を担当する論説委員に登りつめた。
エスタード紙が04年から百周年の08年まで日本移民特集を出した時に編集に関係。07年にはポ語著書『O Sudito: Banzai Massateru』を執筆する過程で、沖縄県人会はもちろん、文協や人文研との関係を作った。
保久原さんは同書を刊行した翌年、08年5月にSESCビラマリアーナで講演し、「フェルナンド・モラエス著『コラソンイス・ジュージョス』は勝ち組をテロ組織のように描いたが、私の父が臣道聯盟の会員だった。だから反発を感じ、父の生き様を通して本当の姿を描きたかった」と説明していた。
11年7月にサンパウロ人文科学研究所で講演した際は、「4年前まで自分はただのブラジル人だと思っていた。本の出版や百周年を通して自分が日系人だと〃発見〃した。自分の中には、子供のころに父母から教えられた正直さ、勤勉さなどの価値観が植え込まれている。今は、それを次世代に伝えていくことが自分の役目だと思っている」としみじみ語っていた。