来月2日の紅白歌合戦で閉幕を迎えるブラジル日本移民110周年記念祭典――一足先に、この祭典事業の総括として「反省会」が、21日、文協貴賓室で催された。110周年祭典を好評する声が多数を占める一方、資金調達では菊地義治実行委員長個人に過度に依存した体制となっていたことが改めて浮き彫りとなり、120周年に向けた持続可能な体制構築や、次世代リーダー育成の必要性が課題として浮上した。
会議は、祭典委員会メンバーを中心に約30人が参加し、本紙の深沢正雪編集長の司会進行で行われた。組織体制、年間祭典行事、資金調達、笠戸丸表彰、県連日本祭との式典併催、国士舘再開発事業、眞子内親王殿下ご歓迎、120周年に向けた課題の8つを議題として、検討が行われた。
組織体制については、「組織の全体像が分かりづらく、互いの委員会の機能が分からない」(市川利雄)と意思疎通の欠如を指摘。また「新年初釜は昨年6月に記念事業に認定されていた。だがその後連絡はなく、開催一カ月前に急に召集があり、実行委員長を任せられた」(林まどか)など、責任者が直前まで曖昧になっていた事例も報告された。
同委員会は、実行委員長の人選に1年間も難航した上、昨年1月末に菊地義治氏を実行委員長として4月に始動開始。これまでの周年事業に比べ遅いスタートとなった。実質一年で準備したことに賞賛の声も上がる一方で、「より丁寧な準備のため3年前が理想」(深沢)と結んだ。
資金集めについては、募金活動や協力券販売により、短期間に計画を上回る約380万レの資金が集まったものの、菊地氏個人の集金能力に依存していたことが改めて浮き彫りになった。「個人頼りでは不安。継続性を追求すべき」(平田アンジェラ)、「基金を設立してはどうか」(栗田クラウジオ)等の提案も。
祭典の目玉となった県連日本祭りとの式典併催については、利点が多かった一方で今後の課題も浮上した。
「日本の要人が日本祭りを知る良い機会になった」(深沢)、「合同開催で資金面での抑制に繋がった」(松尾治)とする一方、「記念式典会場の収容人数に制限があり、多くの人が見られなかった」、「大金を投じて作った特設舞台なのに、ほぼ式典でしか使わなかった」(市川)などの意見も出た。
眞子内親王殿下ご歓迎については、「待望の眞子さまご訪問とあり、地域一帯となって盛り上がった」(安永信一)、「ブラジル人から、さっそく『次はいつ』と聞かれている」(前田ファビオ)とノロエステ沿線で熱狂的に歓迎されたことを紹介。一方でサンパウロ市式典は「マリンガーではエキスポのなかを眞子さまが歩いて視察されたが、サンパウロ市会場では一般人との接触が殆んどなかった」(深沢)、「式典会場内を車で巡回いただくことが出来たのでは」(大城幸雄)と惜しむ声も。
記念事業である国士舘再開発事業については、120周年に向けて「非日系人や三、四世などコロニアから離れた若い世代を取り込む企画も準備している」(栗田)、「イベントを地方で開催することで活性化の刺激となる」(安永)など地方との連携を訴えた。この反省会までを含めた、110周年祭典の報告書が来年初にも発行される見通しだ。
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110周年の年間記念行事については、今年だけの独自企画は少なく、恒例行事に冠をつけただけのものが多かったとの声も。その一方で、拡充を図って豪華版となった新年初釜、文協大講堂が満員となった移民の日仏式法要を賞賛する声もあがっていた。また、2千人以上の芸能関係者を動員した記念式典当日のショー「結」は、「はじめは意思疎通がうまくいかないこともあったが、最後には驚きと満足をもって終えられた。絆を深め、次に繋がる遺産を残した」(上原テリオ)と絶賛していた。日本からの来賓も絶賛していたような豪華ショーが、たった1回、5千人の前で行なわれるだけではもったいない。120周年への課題の一つか。