1992年と2012年の2度、地球サミット(国連環境開発会議)とリオ+20という環境会議を開催し、来年開催のCOP25(第25回気候変動枠組条約締約国会議)招致にも積極的に取り組んできたブラジルが、27日に招致断念を国連に通達。国際社会からも懸念の声が出ていると29日付ブラジル国内紙が報じた。
COP25は米州大陸で開催する事になっており、テメル政権は17年から招致に関心を示していた。また、今年10月の立候補時までにラ米・カリブ諸国の賛同も得ており、ポーランドのカトヴィツェで12月3日~14日に開催されるCOP24で、次回開催国はブラジルと発表されるばかりになっていた。それだけに、会議直前のキャンセルは国連にとっても大きな驚きで、他の候補地を探す必要も生じた。
ブラジル外務省は、予算不足と、19年1月1日に行われる政権交代の手続きなどを考慮した判断と説明したが、立候補時には予算不足への言及はなく、国際社会は、環境問題に対する次期政権の姿勢の表れとの見方を示している。
これを裏付けるかのように、ジャイール・ボルソナロ次期大統領は28日、次期外相を通し、外務相に招致断念を伝えるよう指示した事を明らかにした。
ボルソナロ氏は選挙中から、15年に195カ国が同意したパリ協定からの脱退や、国連からの脱退の可能性を口にしていた。また、28日は、「パリ協定を遵守するなら、アンデスからアマゾンを経て大西洋に至る1億3600万ヘクタールの森林地帯の開発を断念しなければならない」との考えも明らかにした。ボルソナロ氏は、「ブラジル経済を牽引しているのは農業で、環境保護のための農地開発規制はブラジルの国内産業の発展を阻害する」と発言。「国際協定による土地の開発規制はブラジルの主権侵害に当たる」とも主張した。
また、COP25開催費は4億レアルと予想され、予算案に計上された1500万レアルの他に資金を募る必要がある事についても、「誇張し過ぎ」と一蹴している。
一連の発言を受け、国内外からは、ブラジルの環境政策の変化と、森林開発や農地拡大が無秩序に進む可能性を示唆する事を懸念する声も出ている。