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《ブラジル最高裁》テメルの恩赦令に過半数が賛成=再検討要請で結審には至らず=「汚職も暴力犯罪」の声届かず

11月29日の最高裁審理の様子(Coutinho/SCO/STF)

11月29日の最高裁審理の様子(Coutinho/SCO/STF)

 ブラジル連邦最高裁大法廷は11月29日、テメル大統領(民主運動・MDB)が昨年末に出した〃クリスマス恩赦〃の合憲性を問う審理(報告官ロバルト・バローゾ判事)を行った。審理に参加した10人の判事中、過半数を超える6人は合憲性を認めるとし、認めなかったのは2人だけだった。だが、ルイス・フクス判事とジアス・トフォリ長官が証拠再検討を求めたので結審には至っていない。また、審理再開日程は決まっていないと、11月30日付現地各紙が報じている。

 合憲性の審理はまだ結審には至っていないが、大半の判事が合憲性を認めるとの判断を示している事もあり、テメル大統領は今年末も類似の恩赦令を出す事が可能だ。その場合はラヴァ・ジャット(LJ)作戦で摘発、有罪判決を受けて拘留中の人物21人が釈放される可能性がある。
 ただし、審理そのものは結審に至らなかったため、バローゾ判事が今年初めに出した、恩赦のための大統領令の一部を変更、差し止めた仮判決は、法的に有効だ。
 恩赦の合憲性を認めた判事は、アレッシャンドレ・デ・モラエス、ローザ・ウェベル、リカルド・レヴァンドフスキ、マルコ・アウレリオ、ジウマール・メンデス、セルソ・デ・メロの6人で、恩赦は違憲としたのは、報告官のバローゾ判事と、同裁のLJ作戦関連裁判報告官のエジソン・ファキン判事だ。
 テメル大統領の恩赦令では、「刑期が何年だったかに関わらず、刑期の5分の1を務めれば釈放」「暴力犯罪以外が対象」とされ、罰金も恩赦の対象となっていた。この通りだと、「ホワイトカラー犯罪」と呼ばれる、汚職や資金洗浄、私有財産隠匿など、身体的な暴力を行使していない犯罪は恩赦対象になってしまう。これに反発した連邦検察庁特捜局(PGR)が出した異議申し立てを受けて、最高裁審理は開かれていた。
 バローゾ判事の仮判決は、テメル大統領のクリスマス恩赦で定められた「ホワイトカラー犯罪は恩赦の対象」の部分を削った上で、「恩赦対象は禁固8年の刑罰の服役者までで、少なくとも刑期の3分の1は服役しなくてはならない」と規定している。
 バローゾ判事は全体審理でも、「汚職は、危険人物によって行われる〃暴力犯罪〃だ。汚職は人の命を奪い、SUSの大行列を招く。学校給食の牛乳が足りない。病院の薬が足りない。道路の補修が出来ずに交通事故が起こる。全て汚職が原因だ」と主張したが、6人の判事は「恩赦は大統領の持つ特権として憲法にも裏づけがある。司法はその中身に介入すべきではない」とした。
 ラケル・ドッジPGR長官は合憲性の審理を要請した理由を述べた際、「昨年出された恩赦令は犯罪者の利益を無闇に拡大してしまい、犯罪者が裁かれなくて済むとの風潮を生み出した。正当化する理由はかけらほどもない」と語っている。