19日、最高裁のマルコ・アウレーリオ・メロ判事が、2審判決を受けた状態の被告の受刑を差し止める命令を出したことで、「ルーラ元大統領も釈放か」と騒然となったが、同日の内にディアス・トフォリ長官が差し止めた。20日付現地紙が報じている。
アウレーリオ判事の暫定令は、「2審判決で刑務所入りとなった被告の受刑を差し止める」というものだった。その判断で恩恵を受ける受刑者は全国で16万9千人とされ、その中には、今年1月の連邦第4地域裁(TRF4)で有罪となったため、4月からパラナ州の連邦警察で受刑中のルーラ元大統領も含まれることになる。
「被告の受刑は、これ以上控訴ができなくなったときにはじめるべきもの」との持論を持つアウレーリオ判事は、16年11月に最高裁で「2審目の裁判での有罪判決で受刑開始か否か」の投票でも反対票を投じ、今年4月の「ルーラ氏に対して人身保護令を適用するか否か」の投票の際も賛成票を投じている。
ただ、アウレーリオ判事はこれら二つの裁判の投票結果に不満を抱き続けており、「40年間も司法人生を歩んできた者にとり、このように仕組まれた投票結果は我慢できない」とエスタード紙に語っている。
年末の休廷前日に出たアウレーリオ判事の暫定令に、ブラジルは騒然となった。だが、この発表を受けても、ルーラ氏の労働者党(PT)では、ルーラ氏釈放を信じてなかった人が多かったという。ルーラ政権の閣僚だったジルベルト・カルヴァーリョ氏の弁を借りると、それは、「すぐにトフォリ長官が判断を覆すことが目に見えている」ためであった。
だが、ルーラ氏の弁護側は、アウレーリオ判事の暫定令発表から48分後にルーラ氏の釈放請求を提出した。また、クリチーバの連邦警察前ではルーラ氏支持者による抗議行動も行われた。
だが、アウレーリオ判事の判断を問題視したラケル・ドッジ連邦検察庁長官は、即座に「社会の秩序を乱し、治安を不安定にさせうる」との懸念の発表。これを受けたトフォリ長官が、午後7時半過ぎにアウレーリオ判事の暫定令を無効化する判断を下した。
この日、次期閣僚との初会合を行っていたジャイール・ボルソナロ次期大統領は、トフォリ長官が差し止め令を出した後にその行為を賞賛するツイッターを出したのみだった。セルジオ・モロ次期法相はコメントを避けた。
最高裁では来年4月に改めて「2審後の受刑」の問題を審理する予定が組まれており、全ての判事も周知していた。