欧州連合(EU)は16日、昨年7月に出していた暫定的な鉄鋼製品の輸入制限(セーフガード)措置の期限を2年延長すると決定したと16、17日付ブラジル各紙・サイトが報じている。
昨年7月に出された暫定的な鉄鋼製品のセーフガード措置は、当初は今年2月4日までを期限としていたが、発効半年後に延長となった。
これは、米国のトランプ大統領が昨年行った米国への鉄鋼輸入制限措置の影響を受けたものだ。
今後は、2021年7月までにEUに輸入される全ての鉄鋼製品に、国別、品目別に輸入量制限(クォータ)が課され、これを超過した分には25%の関税がかけられる。現在、ブラジルが輸出している鉄鋼製品の18%はEU諸国が購入している。
「昨年、米国がとった輸入制限措置のせいで、これまでなら米国に流れていた分がEUに流入した。地元の市場が影響を受けており、それを保護するための措置」というのが、EU側の言い分だ。
ブラジルは昨年、1400万トン、89億ドル相当の鉄鋼製品を輸出。その内の210万トン、14億ドル相当はEUに輸出された。
欧州委員会の提案によれば、鉄鋼製品26品目に国別のクォータが設定され、それを超過したら高額関税がかけられる。
中国は16品目、トルコは17品目、インドは15品目が対象になり、ブラジルは鋼板、(かみそりや鋸などの)薄刃、鋼管など、7品目が対象となる見込みだ。
EU側は、「まずは欧州の生産者と、製品利用者の利益のバランスをとる。特定のいかなる国も標的とするものではない」としている。
例えば、ブラジル産の薄刃のクォータは、「16万8千トン以内」でスタートし、3年後に「17万6千トン以内」になる。ウクライナや韓国はEU市場におけるシェアが考慮され、ブラジルよりクォータが大きい。圧延鋼板の場合、ブラジル製品に割り振られるクォータは5万トン程度だが、中国産は40万トン以上だ。
超過分に25%の関税がかけられると、採算が取れず、事実上、輸出は不可能だ。
EU側は、2013年から18年にかけて、EU内鉄鋼市場で輸入品が占めた比率は、12%から18%に増えたとしている。輸入量では、ほぼ2倍増だ。
ブラジル外交当局は、いくつかの品目をクォータの対象から外してもらうよう、欧州委員会と交渉中であることを明らかにした。ブラジル鉄鋼協会(IABr)のマルコ・ポーロ・ロペス会長は、「世界を取り巻く保護貿易主義の台頭から、こうなる事は予想されていた。市場閉鎖は痛い。我々の業界の脆弱性がまた高まった」と語っている。
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