アルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領は16日、ブラジリアを公式訪問し、ボルソナロ大統領との首脳会談を行った。2人は、両国間で国外逃亡した犯罪者の身柄拘束と本国送還を迅速化させる条例に調印した。マクリ大統領は会談の席で南米共同市場(メルコスル)を重視する立場を主張し、さらにベネズエラのマドゥーロ政権を批判した。17日付現地紙が報じている。
この2国間協定は、12日にボリビアで逮捕され、母国イタリアに強制送還されたテロ殺人犯、チェーザレ・バティスティ氏がブラジルで10数年間逃亡した状態で身柄をイタリアに渡せなかったことに基づき、国外逃亡犯の身柄の引渡しを迅速に行うことを目的としている。
ブラジルは、2016年から2018年11月までの間に、ブラジル人逃亡犯299人の身柄の引渡しを受け、他国人逃亡犯161人を当該国に送還した。
アルゼンチンから送還されてきたブラジル人逃亡犯は全体の7・91%を占めており、4番目に多かった。また、アルゼンチンに引渡した人数は、ブラジルが送還した逃亡犯の11・76%を占め、2番目に多かった。
今回の合意によれば、正式な身柄引渡し請求は従来通り、外交上のルートを経て行われるが、逃亡犯の個人情報は、担当省庁(ブラジルは法務省、アルゼンチンは外務省)を通して直接交換できるようになる。また、外交ルートを通じて正式合意が成立した時点で、事務手続きが電子化され、身柄引渡しに関する書類の準備も前倒しできるようになるという。
また、マクリ大統領とボルソナロ大統領は、10日に就任式を行った、ベネズエラのマドゥーロ政権を認めないことで意見が一致した。
マクリ氏は「マドゥーロ氏は永久的な独裁政権を築きたいだけ」と批判し、ボルソナロ氏も「南米の自由と民主主義を危うくする存在」とした。
ベネズエラでは15日に、フアン・グアイド氏を議長とする国民議会が「マドゥーロ氏は大統領職を強奪した」とし、改めて選挙を行うまで行政府としての機能を果たすことを決議。米国政府は16日に「同議会だけを合法機関と認める」との声明を出しており、ブラジル、アルゼンチンもこの見解に倣う意向だ。両首脳は、ベネズエラのメルコスル参加資格停止でも合意した。
ボルソナロ大統領はメルコスル関連で、参加国間での関税障壁や事務手続きの簡略化の提案や、各国が参加国以外の国と自由貿易協定を結ぶことを認めるようにとの提案も行った。
両国は同日午後、メルコスル内の対外共通関税率(TEC)の見直しのために協力するとの共同声明も出した。メルコスル内でのブラジルの立場は、パウロ・ゲデス現経済相が昨年、「メルコスルを重要視しない」と発言して以来、微妙なものとなっていた。