17日付けのエスタード・デ・サンパウロ紙A14面によれば、ボルソナロ政権が国内観光の戦略的重要国と考えているアメリカ合衆国、カナダ、日本、オーストラリア4カ国の国民が入国する際に、一方的に観光ビザを免除することを検討していると報じた。同記事によれば、この4カ国に関しては、相手国が観光ビザ発給を求めていても、ブラジル側から一方的にビザなしにすることが「政権最初の100日間」に最優先で進める事項に入っているという。同記事によれば「今年中にビザ免除が実施される可能性がある」という。
これは、4カ国からの旅行者の増加によって、観光業振興と雇用創出による国内消費の成長を目指した政策。ブラジルを訪れる観光客のトップはアルゼンチン人だが2位がアメリカ人で47万5千人、日本からは6万人、カナダからは4万9千人、オーストラリアからは3万4千人が訪れるという〝お得意さま〟だ。
マルセロ・アルヴァロ・アントニオ観光相側から、エルネスト・アラウージョ外相に非公式に提案されていたもので、17日に正式な会議が持たれた。
在外公館にとって観光ビザ収入は重要な財源であり、それをなくしてまで、観光客を増やす政策に対して、前政権までの外務省は否定的だった。外相本人はこの提案に前向きだが「今後、ビザ収入減の規模予測」が必要と報じられている。
それに、ブラジルではビザを免除する場合、通常は「相互免除措置」を取っている。そのため、ブラジル人にビザを求める国に対して、各国がブラジル人観光客に求めている金額と同等のビザ発給手数料を支払う必要がある。
しかし、2017年12月からは日本を含めた前述の4カ国では、ブラジルの電子ビザ発行が可能になり、72時間程度で済むように手続きが簡易化された。これによって、申し込みが41%も増えたという。ビザ免除すれば、さらに増えると見込んでいる。増加した41%分の旅行者が国内で消費した金額は7100万ドルと推測される。
ブラジルが査証免除を行った後に関して、両省は「ブラジル側が査証免除をした後には、4カ国がブラジルに対して手続きを簡素化することを期待する」と報じられている。アントニオ観光相は、中国やインドに対してもビザ取得を簡素化することを検討中と語る。
なお、本紙が山田彰大使に問い合わせたところ、「報道は聞いているが、日本側としては今のところ検討中。具体的な話は出ていない」との返答だった。
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アントニオ観光相は、日本からの観光ビザ免除だけでなく、中国とインドに対して電子ビザを適応することを検討している。特に現在アメリカと貿易戦争中である中国に対しては、ボルソナロ大統領がアメリカに近づく動きによる「緊張関係」を、中国と持つつもりはない意思を示していると言える。中国からは世界中に観光客が行く上に、ブラジルにとって最大の貿易国。「アメリカとの関係が良好になることによって、中国との関係悪化につながることはあってはならない」と観光相は語るとともに、ブラジルと中国が経済的に対等かつ良好な関係を保つようにしたい強調した。新政権の〝世渡り〟のお手並み拝見か。