【既報関連】スイスのダヴォスで開催されている世界経済フォーラムに出席しているジャイール・ボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)は22日に基調演説を行い、イデオロギーに囚らわれない新たなブラジルの創出、世界に開かれた経済、環境保護と経済成長の両立を訴えた。
今回の演説では直接触れられなかったが、新政権の最重要課題である社会保障制度改革について、国際投資家たちは、ブラジルの議会が素直に承認するかを疑っていると、22日付ブラジル各紙・サイトが報じた。
国際通貨基金(IMF・本部は米ワシントン)の調査部門副部長ジャン・マリア・ミレージ・フェレッティ氏は21日、「ブラジルの財政状況改善のため、社会保障制度改革は極めて重要だが、議会が承認しない可能性もある」と語った。
同氏は、前政権も社会保障制度改革を目指したが、議会の協力が得られずに挫折した事を指摘。2月から発足する新議会にも大きな変化は見られないと語った。
テメル前政権の社会保障制度改革案は当初、10年間で8千億レアルの歳出削減効果を持つ内容だったが、議員たちを説得する過程で譲歩を重ねる内に経済効果が4千億レに落ち込んでいた。
これを受けて、このような弱々しい内容で財政改善効果が上がるのか、社会保障制度そのものは保持できるのか、といった疑念を投資家たちが抱くようになった。
パウロ・ゲデス経済相は、10年で1兆レほどの歳出削減効果をもつ改革案も検討しているが、大きすぎる目標もまた、本当に成立するのかとの疑念を生じさせている。
ダヴォス会議開会前夜には一部の投資家から、「大統領の長男フラヴィオの金銭スキャンダルも心配だ。社会保障制度改革採決の時に、良い影響をもたらすことは決してないのだから」といった言葉も聞かれた。
新政権としての社会保障制度改革案は、先週中に発表されるはずだったが、先週は銃規制緩和を行ったのみで、大統領、経済相らはスイスに旅立った。スイス滞在中に改革案を発表する可能性もささやかれているが、大統領に同行している三男のエドゥアルド氏は、「改革案発表はブラジルに帰ってから」と述べている。
軍関係者を多く要職に起用している現政権が、軍人にも社会保障制度改革の痛みを強いるかも関心の高いテーマだ。
「ボルソナロ大統領は、『軍関係者も他業種同様に、社会保障改革の痛みを分かち合うべき』と言った」と、ダヴォスに同行している閣僚からは聞こえている。
フォーラム開催中はブラジル国内に残って大統領代行を務めており、軍人でもあるモウロン副大統領が21日に、軍人が年金を受給するための最低勤務期間を拡大する事や、遺族年金の満額支払いを廃止する事に賛成する発言をした事は、軍関係者が社会保障制度改革に含まれる可能性を示すものと受け止められている。