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ロンドリーナ=81歳で大学入試みごと合格=角内さん〝八十の手習い〟=「次は医学部、脳の限界に挑戦」

自宅で取材に応じた角内(つのうち)さん

自宅で取材に応じた角内(つのうち)さん

 「自分の年齢で大学入試に合格できる人はそう易々とはいない。自分の脳にどれだけのキャパシティー(容量)があるのか、その限界に挑みたい」――今夏、パラナ州立ロンドリーナ大学(UEL)文学部ポルトガル語科に合格した角内アントニオさん(81、二世)は、そう意気込んだ。退職後、〝八十の手習い〟で英語を習い始め、それをきっかけに大学入試に臨んで見事合格した。今月下旬に入学を控え、現在地元で注目を浴びる〝最高齢の新入生〟に話を聞いた。

 角内さんはパラナ州北部コルネーリョ・プロコピオ市生まれ。59年にクリチバ連邦大学薬学部卒業後、独系医薬品メーカー「メルク」の宣伝部門で働いた。その後、79年にロンドリーナ州立大学法学部を卒業。薬局を経営しながら、薬局組合の顧問弁護士としても働いていた。
 退職後、一年半前から通い始めたのがSESCの英語講座だった。「50年以上英語を全くやっていなかったが、勉強を始めてみるとどんどん頭に入ってきた。まだ呆けていないと思った」と笑い飛ばす。そして、腕試しに受験を決めた。
 大学入試では、総合問題からなる一次試験はぶっつけ本番で臨み、二次試験では英ポ語の試験を受けた。
 「この年齢だったら、普通は文章を読んでいる最中に内容を忘れ、難解な問いに四苦八苦するよ。字も小さいし。シュタ(山勘で答えた)した問題もあったくらい」とくすりと笑う。だが、4時間の長丁場に耐え、見事合格した。
 文学部ポルトガル語科を選択したのは、北パラナの歴史を書くためだ。「原生林が広がっていた時代から、北パラナの発展をずっと見てきた。自分の目で見てきた経験をベースに生きた歴史を書きたい。だから校正も含めて全てできるよう、文法や表現技法も磨きたかった」と話す。
 「ともかく人生はいつまでも楽しみがなければ。でないと、何のために生きているか分からない」。そう語る角内さんの、次なる目標は同大医学部合格だ。
 「別に医者になりたいわけじゃないけど、ケブラ・カベッサ(謎解き)が好きなんだ」。この受験をきっかけに、最近では昔使用していた物理の問題集を引っ張り出しては、問題を解くのに夢中になっているという。
 入試に合格してからは〝最高齢の新入生〟として複数地元紙でも報じられ、注目を浴びるようにもなった。
 角内さんは「ポ語でキチガイのことをミニョッカ・ナ・カベッサ(頭の中のミミズ)と言うけど、自分の頭には本当にミニョッカがいるかもしれないね。いつか死んだときには墓場に持っていかず、自分の脳を分析して欲しい。もしかしたら世の役に立てる発見があるかも」と冗談を交えつつ、「年をとってからでも、学問を始めるのは遅くない。そういった意味でも、世論を喚起できれば」と目を輝かせた。


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 81歳ながら、タブレットを自在に操る角内さんは「ソファーで横になりながら、いつもタブレットで遊んでいるよ」と話す。何でもフェイスブックで格言を書くのが趣味なのだとか。2年前から始め、現在では投稿件数は400近くに上る。「マージン(余地)を残し、読者に想像させるように書くのがコツ。断定しては面白みに欠けるし、読んだ後の耳障りが良くないと」との極意を語る。角内さんは近所のショッピングの作文コンクールで選ばれ、その懸賞でテレビが当たったというほどの健筆家だが、「今以上に上手く文章が書けるようになりたい」とか。文学部で磨いて、さらなる高みジャブチ賞を目指す?!