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独移民の町、ポメローデ

 世界最大規模のオクトーバーフェストが催されるサンタカタリーナ州ブルメナウから、車で一時間ほど離れたところに「ポメローデ」というドイツ移民の町がある。〝ブラジルで最もドイツらしい町〟との名を冠するところだ。
 ブルメナウからは近いが、ポメローデ行きの路線バスは一日数本しか出ておらず、交通の便は余りよくない。途中で乗車してくる客は独移民の子孫と思われる金髪碧眼のガイジンばかり。店の標識も独語で書かれ、老人と会話する若者からも独語が漏れ聞こえてくる。閉ざされた異世界に来たかのような錯覚に陥った。
 ポメローデは、1863年に独北部ポメラニア地方の移民により拓かれた。市人口2・5万人で約8割がその子孫にあたる。入植から150年以上経つが、市人口の約8割が独語を話すというから、子孫のほぼ100%が独語を話す計算になる。驚異的な数値だ。
 戦時中には日本移民と同じく敵性国民として厳しく弾圧された。だが、家庭内では頑なに独語を子孫に教え続けた。その習慣は現在でも引継がれており、入学前の子供は家庭では独語のみ、ポ語は社会に出るのに必要な言語という考えが根付いているらしい。
 市内の初中等学校では独語の授業が義務化されており、10年には独語、17年にはポメラニア語も市の公用語となった。民族のアイデンティティとは、母国語と密接に結びついているものなのだろう深く納得させられた。(航)