日本では現在、桜田義孝五輪相の発言が物議を醸している。女子水泳の池江璃花子選手が白血病を患っていると診断されたことに対して「ガッカリだ」「1人リードする選手がいると、みんなつられて全体が盛り上がるので、その盛り上がりが若干、下火にならないか心配している」など、池江選手の体調より五輪を優先したと解釈される発言を行なったためだ▼この発言をめぐる日本国内の反応をネット越しに見ていると「こんな人でも大臣になれる国なんて」と、国を憂うような反応まで見受けられる。たしかに、ここ数年の日本からは大臣の問題発言の類は数多く報道されるので、そういう反応が起きても仕方がないところもあるのかもしれない▼だが、「大臣の問題発言」なら、ボルソナロ政権下の大臣も決して負けてはいない。その例をいくつか紹介しよう。まず、人権相のダマレス・アウヴェス氏。彼女は同政権で数少ない女性閣僚で、女性を初め、有色人種やLGBTなどへの差別問題に対処すべき立場にあるのだが、自身のバック・グラウンドはむしろそれとは真逆のキリスト教福音派にあり、それが故にすでに様々な言動で物議を醸している▼同氏は1月、「これからは男の子は青い服、女の子がピンクの服を着る時代になる」と発言し、国民から強い反感を買った。これは「この発言の主が、一体どうやってLGBT問題を対処できるのか」と不安にさせたものだった。その少し後、彼女が6年前に講演で行なった発言が今度は国際問題となった。それが「オランダでは、男の子は生後7カ月から自慰行為を行なうことを推奨される」というものだ。このようなことが本当に行なわれているのだとしたら、児童虐待行為の温床にさえなりかねないが、当然この発言はオランダで大問題となっている▼続いては、環境相のリカルド・サレス氏だ。これまでブラジルは、労働者党(PT)政権時代にアマゾンの森林伐採の抑制につとめてきた努力が国際的に評価されて来ていたが、環境問題を「生産活動の阻害」として嫌うボルソナロ大統領は環境省の廃止まで考え、国内で大問題となった。その末に前言撤回してようやく選ばれたのがサレス氏だったが、同氏が最近行なった「シコ・メンデスなどよく知らない」の発言は大きな問題となった▼シコ・メンデスといえばブラジルが生んだ有名な環境活動家だ。彼が1988年に暗殺されたときには世界中で報道され、かの元ビートルズのポール・マッカートニーは追悼歌まで捧げている。さらに言えば日本語のウィキペディアのページまで存在する、もうその道では誰もが知ってて当たり前の人物を、環境問題に定評のある国の環境相が知らないというのだから・・・。なおサレス氏は、サンパウロ州で環境局長をつとめていた時代に、違反行為を行なって有罪判決を受けている▼そして、この2人かそれ以上にコラム子が不安に感じているのが、エルネスト・アラウージョ外相だ。同外相は昨年の11月に就任が内定したときから、それ以前に「地球温暖化はマルクス主義者の陰謀」「外務省から左翼の回し者を追い出す」などの発言を、どこの国の大使にもなったことのないヒラの状態のままブログなどに連発。だが、それが故にボルソナロ大統領に気に入られ、急遽外相に大抜擢されたいわば「ネトウヨ外相」だ。なまじ国際問題を取り扱う立ち位置だけに、何を言い出すか不安にさせる▼アラウージョ氏の場合、最近発覚した気になる新事実もある。それは同氏の父で元連邦検察庁長官だったエンリケ氏が1978年、ブラジルに亡命していたナチス・ドイツで2万5千人相当を死に追いやったとされる元親衛隊曹長、グスタフ・ワーグナー氏に関して、3カ国が国外追放の嘆願を行なったにも関わらず頑なに応じなかった、ということだ。アラウージョ氏の極右路線が父譲りのものだったのかと考えると、ゾッとする。(陽)