【既報関連】「ヴァーレ社はブラジルの“宝石”だ。被害の規模がいかに大きかろうと、事故による責任を負わされるべきではない」――1月25日に発生した鉱山ダム決壊事故に関する議会公聴会に呼び出された鉄鋼大手ヴァーレ社のファビオ・シュヴァルツマン社長は14日そう発言して、「宝石なら、なぜ人を殺していいのか」と被害者家族から反発を受けたと14、15日付けブラジル・メディアが問題視している。
同社長は「ヴァーレ社が事故防止のために行ってきたことが機能しなかった。そしてダムが決壊したことは認める」としつつも「ヴァーレは、ダム崩壊を望んだわけでも、崩壊させたわけでもない。事故は不可避だった」と言い訳した。
前日の13日には、ミナス州検察が連邦高等裁に「ヴァーレは利益を安全より優先した。会社幹部たちは保身に走っている」と書かれた文書を送ったばかりだ。
シュヴァルツマン社長は、ヴァーレ社がブラジル国内におよそ500の鉱山ダムを所有しているとし、「ダムの強度監査、事故防止策実施のプロセスにあまり煩雑な手続きを課さないで欲しい」と、まるで「早急に対応したいが、それを行政や司法は邪魔しないで」と言わんばかりの物言いだった。
2015年11月にマリアナで事故が起きたばかりなのに、19年1月までブルマジーニョダムの対応は遅れたと詰問されたシュヴァルツマン社長は「我々にも限界がある。マリアナで決壊したのはサマルコ社所有」と責任逃れを続けた。ただし、サマルコはヴァーレの子会社だ。
シュヴァルツマン社長はさらに、「事故後、全てのダム管理をオンラインで一元化し、モニター監視も24時間体制にした」と語った。
ヴァーレ職員8人逮捕
シュヴァルツマン社長の発言の翌日、15日朝にミナス、リオ、サンパウロ州で、ダム決壊事故の調査関連作戦が行われ、同社社員8人が逮捕された。
ミナス州検察は逮捕の目的を、「ブルマジーニョダム崩壊事故の刑事的責任者の追及」としている。逮捕された8人の内、2人は幹部クラスで、2人は管理職、4人は技術者だ。
その内の一人、アレシャンドレ・カンパーニャ氏は、1月29日から2月6日まで逮捕されていた、ヴァーレの下請け会社の社員ナンバ・マコト氏から「ダム強度証明書類に署名を強制された」と名指しされた人物だ。
ダム決壊事故発生から3週間、死者の数は166人に達し、147人の行方不明者の生存も絶望的だ。事故現場では今も遺体の捜索活動が続いている。