ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル社会保障改革問題》大統領、議会に改正案提出=平等負担を国民に呼びかけ=軍、公務員の特権も削減へ=問題残る政治的な交渉力

《ブラジル社会保障改革問題》大統領、議会に改正案提出=平等負担を国民に呼びかけ=軍、公務員の特権も削減へ=問題残る政治的な交渉力

社会保障制度改革憲法改正案を下院議長に提出するボルソナロ大統領(Luis Macedo/連邦下院)

社会保障制度改革憲法改正案を下院議長に提出するボルソナロ大統領(Luis Macedo/連邦下院)

 ボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)は20日、社会保障制度の改革を目的とした憲法改正案をロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)に提出したと、21日付伯字各紙が報じた。ブラジル・メディアからは「広範に網羅している」、「特権的待遇の削減など必要な点を押さえている」、「予想よりも尖った提案」との評価もあったが、問題は今後の政治交渉力となりそうだ。

 年金受給開始年齢は男性65歳、女性62歳とし、受給に最低限必要なINSS負担期間を15年から20年へと延長、給与に応じて年金負担率を上げる、満額受給のためには40年負担など、事前から漏れていた内容が、予想以上に変更されずに出てきた格好だ。
 今回の憲法改正案からは、軍人対象の年金制度改革は除外されたが、「法改正で対応できる」とし、軍人年金改革法案は3月20日までに提出するとボルソナロ大統領は明言した。
 20日の夜に行われた国民向けの演説の中で、ボウロナロ大統領は、「新しい社会保障制度は、誰が特別というわけではなく、ブラジル国民全員が少しずつ負担を分かち合うもの。目的は一つ。より良いブラジルの将来のため」と語った。
 ボルソナロ大統領は、「下院議員時代に社会保障改革に反対していたのは間違いだった。もし、国家の財政状況をちゃんと把握できていれば、私も当時の議員たちも社会保障制度改革に賛成していただろう」と語った。
 今年のINSS、公務員年金、軍人年金の諸制度の収支は、2920億レアルの赤字になると政府は試算している。社会保障制度改革による財政削減効果は、向こう10年で1兆1千万レアル、20年では4兆5千万レと試算されている。
 就業していない青少年世代に向けて、INSSの代わりとして、給与から自分で積み立てた年金を定年後に受けとる仕組み「カピタリザソン」も改革案に含まれている。
 憲法改革案はこの後、下院憲政審議会、経済問題審議会にかけられ、下院採決へと進む。憲法改正は通常の立法手続きよりハードルが高く、議員定数の60%以上、513人中308人の賛成が2回必要だ。
 また、上院でも下院と同様に、委員会審議、議員定数60%以上、81人中49人の賛成が2回必要だ。内容に変更があれば下院差し戻し審議も必要となる。
 下院のマイア議長は「上半期中にも成立させる事は可能」と語っているが、就任早々の幽霊候補者疑惑を巡るゴタゴタと、ベビアーノ総務室長官の更迭に伴う、ボルソナロ大統領本人の公私混同の振る舞いに、野党だけでなく与党内にも不満の種が燻っている。これを機に政治交渉役を立て直さないと、「下院308、上院49」を確保できるかは微妙な情勢だ。