【既報関連】独裁体制を敷くマドゥーロ大統領と、1月23日に暫定大統領就任を宣言したフアン・グアイド国民議会議長の2人の大統領がいる異常事態のベネズエラ。「2月23日には諸外国から援助物資が届く」とグアイド暫定大統領は宣言したが、それを阻止しようとマドゥーロ大統領が21日にブラジルとの国境封鎖宣言を行ったことで、ベネズエラとの緊張が高まっていると、22日付ブラジル紙・サイトが報じた。
ボルソナロ大統領は反マドゥーロの立場で一貫しており、23日の援助物資搬入に向けて準備を整えていた。それに対し、マドゥーロ大統領は21日に「今日夜8時(ブラジリア時間夜9時)をもって、ブラジルとの国境を完全に閉鎖する。他国の軍が我が国の領土に入ってからでは遅い。閉鎖は新たな指示があるまで続く」と宣言した。
21日には連邦政府広報官オタヴィオ・バロス氏は、「マドゥーロ大統領の国境封鎖宣言は出たが、方針に変わりはない。援助物資は23日にはベネズエラ国境に到着する」と語った。しかしながら「援助物資引渡しには、グアイド暫定大統領の命を受けた部隊が、ブラジルに受け取りにくる事が必要」とも表明、ブラジル軍部隊がベネズエラに援助物資を持って入る可能性を否定した。
アミウトン・モウロン副大統領も、「先に攻撃されない限り、武力紛争はありえない。マドゥーロ氏もそこまで馬鹿ではない。国境閉鎖を決めたのは、ベネズエラ人が援助物資を受け取りにブラジルに行く事を阻止したいのだろう。軍がベネズエラに入る事は絶対ないと何度もマドゥーロ氏には伝えたのだが」と語った。
22日、毎朝開けられる国境ゲートは閉鎖されたまま。ベネズエラに帰れなくなった人や、脱出しようとした人が国境の両側に集ったが、ベネズエラ軍は誰も通さなかった。そのため、道もない森や草原を歩いてブラジルに入る人も出た。「命がけでここまで来た」とベネズエラ人が語る様子は同日昼のTVニュースでも放送された。
また、国境からベネズエラ側に70キロほど離れたクマラカパイで、国境開放を求める先住民族と、ベネズエラ軍の衝突が発生、一人が死亡し、多くの負傷者が出た。負傷者を乗せた2台の救急車だけはブラジルへの通行を許可され、ボア・ビスタの病院に運ばれた。負傷者の家族たちは、ブラジルメディアに「『国境を開いてくれ』と兵士たちに訴えていたら撃たれた」と語っている。
22日昼前には、23トンの粉末乳、500組の救急医療セットの支援物資を積んだブラジル空軍機が、ロライマ州都ボア・ビスタに到着した。ブラジルは、「ベネズエラ側の受け取りが多少遅れても、パカライマで待つ」との姿勢だが、23日の情勢は予断を許さない。