リカルド・ヴェレス・ロドリゲス教育相が25日、全国の学校にメールを送り、ボルソナロ大統領の選挙時のスローガンを盛り込んだ文書の朗読と国歌斉唱を義務付け、その様子を録画したビデオを教育省に送付するよう依頼した。だが、多方面から強い反発を招き、翌26日に取り消した。26日付現地紙およびサイトが報じている。
ロドリゲス教育相は26日、「ブラジル人諸君! 新しい時代に向け、ブラジルに敬意を表し、より高いレベルの責任ある教育を祝おうではないか」との文言に、ボルソナロ氏の選挙時のスローガン、「ブラジルは全ての上にあり、神は全ての人々の上にある」を加えた文書を添付したメールを全国の学校に送った。
教育相はこのメールで、全国の学校の校長らに、学期のはじめに先の文書を読み上げ、国旗掲揚と国歌斉唱を行うことと、その様子を録画して教育省に送ることを求めた。
これに対し、教育現場が一斉に反対した。第一は、ボルソナロ氏の選挙スローガンを唱えさせることへの反発だ。憲法学者のヴェラ・シェミン氏は「ブラジル憲法は、公の場で特定の人物の名やその人物を象徴するような文句を唱えさせたりすることを禁じている」との見解を示している。
また、サンパウロ総合大学(USP)法学部教授のニーナ・ラニエリ氏も、「肖像権とプライバシーの権利を侵しうるものだ。これは連邦政府によるプロパガンダ(宣伝)なのか」と憤りをあらわにしている。
さらに、「教育現場を録画して提出」というのは、昨年11月にサンタカタリーナ州の次期州議(当時、現在は州議)のアナ・カロリナ・カンパグノロ氏(社会自由党・PSL)が「歴史の授業を録画して自分に送れ」と要請して社会問題になったように、「教育現場への検閲行為」との印象も強い。保護者や本人の同意も得ずに生徒の様子を録画することは児童憲章などにも反する。
また、国歌は、70年代の軍政時代こそ、毎日歌うよう義務付けられていたが、2009年の法改正で、週に1度歌えばよいことになっている。
この問題は政界にも飛び火し、ボルソナロ氏のPSLに所属し、USP法学部教師でサンパウロ州議のジャナイーナ・パスコアル氏も「あまりに非現実的」と批判した。また、ボルソナロ大統領の推進する「政党なき学校」の支援団体も同教育相の手紙内容に否定的だ。
ロドリゲス教育相は26日、これらの批判を受け、「あいまいなことを言ってしまった」として謝罪し、選挙スローガンの部分を削除。ビデオ送付についても、学校側が送りたい場合は、保護者や本人たちの同意を得て録画し、送るよう指示するメールを再送付した。