政界混乱の続くベネズエラで7日に大停電が発生。11日現在も復旧の見込みがたたず、医療機関での死者が10日までに230人を超えるほどの大惨事となっている。9日~11日付ブラジル国内紙、サイトが報じている。
停電はベネズエラ時間の7日夕方からはじまった。この停電は政府の発表によると、同国内の電力の大半を担う、グリ第2発電所の機能が止まったためだという。直接の原因は明らかにされていないが、同発電所は歴史が古い上、メンテナンスのための投資が十分になされていなかったと言われている。
ベネズエラでは停電は日常茶飯事で、昨年10月にも大規模なものが起きたが、今回の停電は首都カラカスを含む全23州中15州に及び、5日目になっても回復の見込みが立たないなど、前代未聞の状況に陥っている。カラカス時間の11日午前11時30分現在も6州で停電、12州で供給不十分の状態が続いているという。
この停電により、国民は電気のない生活を強いられている。カラカスの地下鉄が動かないのはもちろん、全国各地で、ガソリンスタンドで給油できない、商店も開業できない、電力不足で取水や浄化ができず断水といった問題が起きている上、一般家庭や食堂の食材の蓄えも減り始めている。このため、かろうじて開業している商店では、水や燃料、食料などを求める人たちで長蛇の列ができているという。
だが一番被害が深刻なのは医療関係だ。電気がないと、手術をすることもできず、人工透析や人工呼吸を行うための機械を使うこともできない。このため、機械が止まって医療が継続できなくなった集中治療室の新生児など、10日までの時点で既に230人以上が亡くなったという。
さらに、この影響は同国との国境を有するブラジルのロライマ州にも及んでいる。それは同州の電力がブラジルの電力統一システムに所属しておらず、ベネズエラからの電力供給に頼っているためだ。
マドゥーロ大統領は、「今回の大停電は米国からの電磁テロが原因だ」と強調。経済制裁を加え続け、野党中心の国会の議長で1月に大統領宣言を行ったフアン・グアイド暫定大統領を支持する米国を批判した。
一方、グアイド議長は「今回の大停電は、汚職にまみれ、必要な投資やメンテナンスを怠ったマドゥーロ政権が引き起こしたもの」と主張。米国のジョン・ボルトン国家安全問題担当大統領補佐官によると、9日に行われた反対派の大規模デモ後、ベネズエラの軍部の一部も、反体制派支持の可能性を巡り、グアイド氏と交渉を行い始めているという。
大停電は少しずつ回復してきていたが、首都カラカスでは11日未明にラ・シウダデラ地区の変電所が爆発して火災を起こし、一部地域が再び停電に陥っている。
グアイド氏は今回の大停電を反抗材料とし、11日に臨時国会を召集。国際社会からの支援を受けるため、緊急事態宣言を採択するよう求めた。