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 椰子樹社(多田邦治代表)が発行する歌誌『椰子樹』379号が編集部に届いた。《母逝きし齢にあと三年なりやわらかに曇る庭にバラ散る》(寺田雪恵)にはしんみりさせられる。《遠き路虫の知らせか尋ねしが十日の後に訃報届きぬ》(神林義明)にも、「死ぬ前にあえて良かった」という安堵感と「なんで突然に」という驚きが共存する作品。《ごみを捨て食事をつくり買い物もひとりで出来るを何よりとなす》(富樫苓子)にも共感。《ニッケイの俳句短歌を日々読みて病みがちの吾が生きる糧とす》(横沢幸子)との作品に接し、邦字紙冥利に尽きるの一言。これからも読者の皆様の“生きる糧 ”を提供し続けるために、俳壇、歌壇にどしどしと投稿をお願いしたいところ。

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 13日朝、サンパウロ市郊外にあるスザノ市セントロの公立学校で、生徒5人を含む計10人が射殺される大量殺人事件が起きた(本日2面で詳報)。事件現場のすぐそばにある「スザノ文協」は、すぐさま運動場や駐車場の敷地を軍警に提供して緊急ヘリの離着陸上に使わせ、被害者家族の会合の場として会館を開放して積極的に協力している。その様子はグローボ局ニュースなどでも報道され、好感を集めている。「何かあったときに頼れる日系団体」というイメージは、コロニア全体にとっての財産といえる。スザノ文協の自発的な協力は、悲惨な事件の中でも一服の清涼剤のような役割を果たしている。