ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》ベネズエラ難民の各州移送開始から1年=5千人超が67市で生活=「職の確保」が最大の課題

《ブラジル》ベネズエラ難民の各州移送開始から1年=5千人超が67市で生活=「職の確保」が最大の課題

ブラジルに逃れてきたベネズエラ人の苦境を伝える3日付のフォーリャ紙

 【既報関連】マドゥーロ独裁体制が引き起こした政治、経済、人道危機が深刻化し、ブラジルにも多くのベネズエラ人が逃げ込んでいる。

 「ベネズエラと隣接するロライマ州だけでは難民の受け入れにも限界」として昨年4月に始まった、ベネズエラ人をブラジル国内の町々に移送する作戦(Operação Acolhida)が始まってほぼ1年が経過した。この1年で5256人のベネズエラ人が国内67市に移送され、それぞれの土地で生活基盤を作ろうとしている現状を、3日付ブラジル紙が報じた。

 ロライマ州に入ったベネズエラ人で、他市への移送を望む人は、ボア・ヴィスタ市内の収容所の一つに集められる。州外移送のためには、身分証明書や納税者番号、労働手帳などの書類を受け取り、伝染病の予防接種を受ける事と、同意書への署名が求められる。場所を希望する事はできないが、移送先を提示された時に断る権利はある。

 「計画はよく組織化されている。14、15年に、ハイチ人300人が突然バスで到着した時よりも、状況はずいぶん良い」と語るのは、サンパウロ市で長年、移民受け入れ活動を行っているパオロ・パリセ神父だ。

 ただし、同市東部サンマテウスの一時収容センター(CTA)では、259人のベネズエラ人を受け入れたが、何人かは出て行ってしまった。彼らは、宿泊施設の不備と就労難が問題だと語っている。全国ベネズエラ人協会コーディネーターのセーザル・バリオス氏は、「ブラジルに来たベネズエラ人の総数から見れば、国内移送作戦によるインパクトはまだまだ小さい」としている。

 この作戦は、「生活費を稼げるだけの仕事と住居、言語習得の場を用意し、家族と合流するまで支援する」のが建前だが、多くの場合、「職の提供」に問題がある。

 南マット・グロッソ州ドウラード市にある豚肉加工工場で豚の解体の職を得たジョアン・サンチェス氏の勤務時間は、朝5時~昼の2時半で、休憩は70分だけ。彼は「受け入れ体制に満足している。ボア・ヴィスタにいる時よりも状況は100%良い」と語っているが、こういうケースはまれだ。

 足の自由が利かず、車イス状態のヴィクトル・ゴンサレス氏は、初回の移送作戦でサンパウロ市に来た。同氏は多くの同胞と共にサンマテウスのCTAに送られたが、就職面接を斡旋された事は一度もない。自力で裁縫所の職を得たが、契約は1カ月のみ。長時間勤務のせいで職場で寝泊りしていたため、CTAには戻れず、一時的に、ロライマ州でも経験した路上生活に舞い戻った。現在は別の施設に泊まっている。

 ゴンサレス氏は、ロライマでは路上でジュースを売っていた。サンパウロ市では身障者証明がないため、身障者用の職も得られずにいる。こうした境遇でも、「それでもブラジルが好き。なんとかして職を得て、医療費を稼ぎ、また歩けるようになりたい」と希望を捨てていない。