ブラジルでは09年以降、薬剤耐性の高い結核の患者が3倍に増え、1日3件発生していると8日付現地紙が報じた。
17年に報告された結核患者は7万3200人で、1日200人が罹患している。同年の発生率は35・3人/10万人で、15年の34・1人以降、16年の34・3人のように増加傾向にある。昨年は34・8人/10万人に落ちたが、まだ15、16年の数字を上回っている。
しかも、主な結核治療薬2種類が効かない薬剤耐性の強い患者は、09年の339人が1110人にと3・27倍に増えた。薬剤耐性が強く、治療薬を使っても全くまたはほとんど効果が表れない患者は右肩上がりに増えている。13~14年こそ約700人で横ばいだったが、15年は1200人に急増。16年は1千人強に減ったが、17年は1110人に増えた。
保健省によると、結核患者数は、景気や社会経済層(貧困層や極貧層)の動きと連動しており、保健衛生部門への投資減額や衛生設備の不備、換気の悪さなどの住環境が悪影響を与えている事が窺われるという。
貧困者増との関係は、ブラジル全体の結核患者発生率は約35人/10万人だが、リオのファヴェーラ、ロッシーニャでの発生率は300人/10万人に上る事でも明らかだ。
結核は予防や治療が可能で、公共の医療機関では無償で治療が受けられる。他方、薬剤耐性の強いケースが増えているにも関わらず、致死率は横ばい状態だ。それでも、毎年、約4500人(1日約12人)が結核で命を落としている。また、予防接種率が低く、麻疹(はしか)の流行が起きたアマゾナス州は、結核の発生率も72・9人/10万人と高い。
結核で死亡する例は、受診が遅れたり、正しい診断が下るのが遅れたりした場合が多い。また、完治前に治療をやめたりすると、薬剤耐性の強い結核に移行しやすい。
31歳で罹患したエリカ・バルボーザさんは公立の救急病院で肺炎と誤診され、治療を受けたが症状が戻ったため、私立のクリニックへ行き、気管支炎と診断された。ここでも改善せず、3人目の医者に結核の検査をするよう言われたという。発症から診断まで1カ月かかっており、医者の側も準備が出来ていないと懸念する声も出ている。