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レジストロ=新史料館、ついに工事再開=建設地の訴訟、控訴審で勝訴

完成予定の新史料館

完成予定の新史料館

 建設予定地を巡って訴訟に発展し、一旦中断していたレジストロ日本移民史料館の建設工事が、4月第1週からようやく再開された。同史料館は、海外興業株式会社が竣工した精米所と倉庫群だった建物内にあったが、SESC誘致のために移転を余儀なくされた。その交換条件として新史料館建設を同市が確約し、順調に建設が進んでいるかに見えた。ところが、建設地が不適切として訴訟問題に発展。第一審で敗訴したものの控訴審で勝訴し、ようやく工事再開となった。

 元々の史料館は1922年に竣工された精米所と倉庫群からなる州有数の歴史建造物で、99年間の無償使用権を得て02年に改修して移民史料館として落成した。ところが、市からSESC誘致のためには同建物が必要で、譲渡して欲しいとの強い要望を受けた。
 リベイラ河沿岸日系団体連合会の山村敏明会長は、「精米所の建物はコロニアの歴史そのもの。あれを失ったのは大きな損害だった。反対も根強かったが、市の発展のためならと泣く泣くコロニア側が折れた」と経緯を説明する。
 新史料館の建設地は、灯篭流しの舞台となるベイラ・リオ公園の隣にある666平米の土地。州と同市が約150万レアルを負担し、建設される計画となった。環境局からの認可を得て、正式な入札の後に17年末に着工。18カ月間での完成を見込んでいた。
 ところが、建設地を巡り訴訟問題に発展。基礎工事の途中で工事は一時中断となった。第一審は敗訴したものの、今年2月15日に控訴審で勝訴が確定。同18日に同市は建設業者に対して工事再開を命じ、4月第一週にようやく工事再開となった。それまでに一年以上を要したという。
 ジョルナル・ニッパク紙によれば、ジウソン・ワギネル・ファンチン同市長は「法律に基づき環境当局との間で認可されたもので、この民事訴訟においては揺るぎない覚悟と自信を持って臨んできた。関係各省庁と共同による努力の結果であり、我々の兄弟である日本移民の記憶を保存するために大変重要な史料館だ。これは歴史に貢献するのみならず、市の観光名所の一つとなるだろう」と見通した。
 工事再開を受けて山村会長は、「本来ならもう完成しているべきもの。昨年の移民110周年での落成を期待していた。だが、こうなってしまったのは仕方ないこと。だいぶモダンな史料館になる。精米所もいずれは修復しなければならず、資金もない状態だった。そう考えれば、これもいいことだったかも」と前向きに理解している。
 新史料館の完成見込みは未定。だが当初の工事期間を考えれば、来年には落成できそう。講堂や展示ホールを完備したもので、現在保管されている資料や美術品などが納められる。