ブラジルの石油公社ペトロブラス(PB)が11日、12日からディーゼル油の精油所価格を5・74%引き上げると決めたのに、その晩、ボルソナロ大統領からの介入が入り、値上げを断念した。これを受け、12日のPB株は大きく値を下げた上、それに引きずられたサンパウロ株式市場指数(Ibovespa)も大幅ダウンで推移した。
ブラジリア時間の12日午後3時40分頃を見ると、Ibovespaは前日比1・85%ダウンの9万2999ポイントで、PB株は、通常株が8・04%ダウン、優先株が67・39%ダウンだった。ただし、12日の大幅ダウンにも関わらず、PB株は年初より15%アップした水準を保っている。
少なくとも表面上は新自由主義的経済政策を標榜するボルソナロ大統領は、政府介入は好ましくないとの立場だが、「値上げ幅がインフレ率より高いのでは」とPBの経営判断に苦言を呈した。
12日の朝、ブラジル北部のアマパー州州都マカパーの新空港開業記念式典に参加したボルソナロ大統領は、「報道陣の諸君が理屈をこねて、私を納得させようが、させまいが、どっちでもいい。私が何を喋ろうと、君らにとっては『適切な答え』にはならないだろう。何度も言うが、私は経済の専門家ではない。でも、『私こそが経済の専門家だ』と調子に乗っていた奴らが国の経済を悪くしたんだ」とし、「前日の判断が果たして適切だったのか否か」との問いかけをはぐらかした。
PBとしても、「大統領に言われたから値上げをやめた」とは公言できず、「現行価格は、“数日間は”値上げをせずに耐えられるほどの余地を残してある」と発表した。
PB社による、一夜にしての方針転換は、同社が本当に独立した判断で燃料価格を決めていけるのか、大きな疑いを喚起した。
昨年5月に超大型ストを起こし、今も不満をため込んでいるトラック業界を怒らせれば、再びストを行うのではとの懸念が、政府の介入を誘った要因と見られている。
PBによる値上げ見送り決定に対して、ブラジル・インフラ・センター幹部のアドリアーノ・ピレス氏は、「全くもって驚きだ。政府は『我々は強い。我々は自由主義経済』と言っておきながら、トラック運転手たちにビクビクしている。政府介入による値上げ見送りは明らかに後退。こんな事をしていては信用を失う」と語った。(12日付G1サイトより)