【群馬県発】群馬県大泉町のショッピングセンター「ブラジリアンプラザ」は、今年1月に本格的に再開した。かつて大泉町に住むブラジル人にとって無くてはならない場所だったがここ数年、休業状態が続いていた。大泉町に訪れ、外国人支援や観光の拠点としての役割や、地域住民の声を取材した。
大泉町は人口約4万人のうち外国人が18%で、その半数以上がブラジル人の「ブラジリアンタウン」。町内には自動車や食品の大規模工場があり、1990年の入管法改正以降、町をあげてデカセギを受け入れてきた。
ブラジル人商店が一カ所に集まった「ブラジリアンプラザ」は、95年代にオープンした。当時はほかにこの種の商業施設はなく、在日ブラジル人の大泉町やその周辺に住むデカセギたちの憩いの場となった。プラザ内には電気製品や衣類を扱う店などが軒を連ね、週末には買い物を楽しむブラジル人で賑わった。
風向きが変わったのは2000年代半ば。近くにブラジルの食材を扱うスーパーが開店し、客を奪われ少しずつ活気を失っていった。
さらに08年のリーマンショックや、11年の東日本大震災が影響し、帰伯ラッシュに。帰伯を手配する旅行会社だけを残し、ほかすべてのテナントが立退いた。
再建に向けて動き出したのは6年前。在日日系コミュニティの拠点にすることを目的に、人材派遣会社アバンセコーポレーション(林隆春社長)がプラザを買い取った。本格的な再開に先駆け、2年前にプラザ内に障がいや発達の遅れのある児童のための福祉施設を開設。大泉町やその周辺に住む外国人子弟を受け入てきた。
交流ネットの林勉事務局長は、「障がいを持った子供がいても、外国人の親はどこに相談すればいいのかわからない。ここではそういった親が行政支援を申請する際の手助けもしている」と話す。
再開したプラザは以前と同様に小売店や旅行会社のテナントを有するが、主要な事業は外国人支援だ。福祉施設の運営の他に、外国人が起業やイベント開催をする際のコンサルティングも行う。
林事務局長は「ブラジル人は経営者になりたい人が多いが、失敗して夜逃げするケースもある。大泉のような地方には人手不足で廃業しそうな会社が多い。経営者になりたいブラジル人はそういった会社を受け継ぐ人材になりえる」と話す。
再開に伴って大泉町観光協会がプラザに移転した。プラザは大泉駅の玄関口である西小泉駅近くにあり、同協会に来訪する観光客が増やすのが狙いだ。
同協会の中山正樹事務局長は、「ブラジルのレストランやスーパーは西小泉駅周辺に集まっている。駅を出たらまず立ち寄って、大泉の情報を得てほしい」と話した。(つづく、山縣陸人通信員)