母県との頻繁なやりとりが必須なことから「最後の一世組織」とも言われる県人会の会長が、二世、三世へと世代交代が進んでいる。各県人会が今年度の総会を終え、現時点で一世会長の数は16人のみ。一方、二世、三世会長が31人、66%と圧倒的多数を占めるようになった。ブラジル日本都道府県人会連合会(山田康夫会長、県連)が3月28日に行った総会では、県人会の未来を考えた対応策として、県連は財政の強化や若手会員の獲得を提案。今後の生き残りを賭けた対応の必要に迫られている。
一世が会長の団体は秋田県、岩手県、新潟県、山形県、東京都、埼玉県、千葉県、茨城県、岐阜県、滋賀県、岡山県、山口県、徳島県、愛媛県、長崎県の16県。大半を二世が占め、三世としても広島県の吉弘貞夫ロベルト会長、沖縄県の上原定雄ミルトン会長らの世代が増える傾向にある。
山田会長によれば、10年程前には一世会長は約30人だった。僅か10年でその数は逆転し、「更にあと10年経てば一世はほぼいなくなる可能性が高い」という。
「今までは一世が母県との橋渡しをしていた。世代を経れば日本語での連絡が難しくなり、日本とのやりとりを県連が肩代わりすることになる。だから今後は県連の役割が増える」と山田会長は語り、そのための人件費確保等の観点から「県連は財政強化が必要」と強調する。
3月の総会では県連の財政強化の一環として、予算案に年会費を50%値上げした収入2万8200レアルを盛り込んだ。しかし出席者39人中、24人が反対に投票し不承認となった。
反対に投票した長崎県人会の川添博会長は、県連側の意見は理解できるとしつつ「県人会の会員は納得しないだろう」と首を振る。
未来のための投資は大事だが、現在の県人会はどこも財政状況が厳しい。「むしろ年会費を下げて会員の士気を上げるべきでは」と川添会長は意見を述べている。
総会ではもう一つ将来の事を考えた提案として、予算案の支出にASEBEX(日本留学生研修員ブラジルOB会)の60周年記念式典へ支援金8千レアルを盛り込んだ。
これにもいくつかの県人会からは反対意見が出たが、若手会員獲得のためには必要だと賛成の意見が相次ぎ承認。
また、埼玉県人会の吉田章則会長による「若手の県人会参加のために、若手が参加できるイベントを増やせれば」という意見は好意的に受け止められた。
山田会長は「各県人会で危機感に温度差がある」と厳しい表情を浮かべた。
□関連コラム□大耳小耳
現在、県連事務局は3人の職員で運営されている。もし世代を経て各県人会の日本語担当がいなくなったら、県連だけで対応しきれないだろう。また、山田会長は日本語で連絡が取れなくなれば「日系人子弟への援助を日本の県民は理解してくれるか」と懸念している。更に2月の代表者会議では、イベント会社のGLイベンツからパートナーとして別事業を立ち上げることを提案されたと報告されたが、それも人手不足で難色を示す。各県人会が協力し合いアイデアを出し合わなければ、打開策は見出せない?