【既報関連】16日、最高裁や同裁判事に対する脅迫や中傷、フェイクニュース(虚報)に対する捜査の継続を巡り、ラケル・ドッジ連邦検察庁長官とアレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事が、打ち切りか否かの判断の応酬を行った。それは、モラエス判事が雑誌やネットに掲載されたジアス・トフォリ最高裁長官に関連する記事の撤去命令を出したことが、「検閲」と批判された直後だった。17日付現地紙が報じている。
ドッジ検察庁長官は16日、最高裁が行っている同裁や同裁判事に対するフェイクニュースなどの捜査は、「司法が裁判権と同時に、捜査と告発を行う権利を行使しており、1988年憲法がそれらを分離したことに逆行する」として、検察が行ってきた捜査内容をお蔵入りさせること(捜査打ち切り)を決めた。
同件は、トフォリ長官が3月に捜査開始を決めたときから物議を醸していた。通常の捜査は、裁判所以外の機関が捜査開始要請を出し、裁判所が承認してはじまるが、今回は最高裁内の要請で捜査開始となった。また、捜査開始を認める前に検察の意見を求めるという過程が省かれた上、報告官はくじで決めるという原則が無視され、トフォリ長官が独断でモラエス判事を選んでいる。
また、16日のドッジ長官の判断後、モラエス判事らは「捜査に対して最終決定権を持つのは検察庁ではなく、最高裁」として、捜査期間を90日間延期するとの判断を下した。
昨日付でも報じたように、モラエス判事は15日、サイト「アンタゴスタ」と同系列の雑誌「クルゾエー」に、トフォリ長官に関連する記事の撤去を命じた。問題の記事は、ラヴァ・ジャット作戦の報奨付供述者のマルセロ・オデブレヒト被告が、2007年に送ったメールに記した「父の友達の友達」は、ルーラ政権の総弁護庁長官だったトフォリ現最高裁長官を指すと連邦警察に説明したことを報じた記事だ。この命令は、「検閲だ」としてマスコミ業界から強い批判を浴びていた。
他方、モラエス判事は16日、「最高裁に対するフェイクニュース」に関連して、7人の人物の家宅捜索と物件押収などを命じた。対象者は、昨年の連邦直轄区知事選に進歩共和党(PRP)から出馬した元陸軍大将のパウロ・シャーガス氏、ブラジル労働刷新党(PRTB)からサンパウロ州議員選に出馬したイザベラ・トレビザーニ氏らで、携帯電話やコンピューターなどを押収。フェイスブックなどのアカウント閉鎖も命じられた。
彼らはワッツアップなどで、「最高裁はボリバル主義と結びつき、麻薬密売人まで釈放する」とか、「法衣を着た泥棒集団」、「最高裁を裁く特別裁判所を求める」などと書いた情報を流しており、最高裁が問題視していた。だが、16日の家宅捜索に対しても、「表現の自由の侵害に当たるのでは」と危惧する声が上がっている。