かつての“サッカー王国”ブラジルは、2002年のW杯優勝を境に、4大会連続で優勝を逃した。いまだ記憶に新しい5年前、地元開催W杯での7対1での敗戦、国内リーグの名将チッチをもってしても、昨年のロシアW杯では8強止まりだった。
何がこうした状況を招いているのか、有力紙エスタードが、ブラジルで多くのクラブチームを指揮したドリヴァル・ジュニオル氏にインタビューを行った。
歴史的に多くの名選手がテクニックを磨いたストリートサッカーの衰退、青田買いで早すぎる才能の国外流出、結果至上主義に蝕まれる選手育成の現場や監督の日常。ドリヴァル氏はこれらをブラジルサッカーの低迷の要因に挙げた。
ドリヴァル氏はまた、1982年のW杯で、ブラジル代表がジーコ、ソクラテス、ファルカン、セレーゾを擁しながらもイタリアに敗れたことが、ブラジルだけでなく、世界のサッカーの傾向を結果至上主義に傾ける原因になったと嘆く。
Q「ブラジルサッカー低迷の要因はなんでしょうか?」
A「いろいろな要因があるが、昔に比べ、今は選手育成が難しい。昔の子供たちの遊びは道端でのサッカーだけだったが、今は家でパソコンやスマホだ」
Q「才能の早期流出も気になりますね」
A「その通りだ。毎年1500人ものブラジル人選手が国を離れてしまう。今、国内1部リーグでプレーしている選手の約4割は、昔なら到底、1部でプレーできていなかった。毎年1500人分の穴を埋めるために、十分な準備ができていない若い選手を使わざるを得ない。育成現場でもすぐに結果、結果だ」
Q「監督の置かれている状況に関しては?」
A「本来は、与えられた時間の中で選手育成計画をたて、チームや選手を成長させ、修正すべきところを修正した後に試合の結果が来るのであって、望み通りの結果を出せたかはその後で評価されるべき。でも、実際は、水曜、日曜とめまぐるしく試合があり、少し連敗すればすぐクビだ。監督の仕事は試合の勝ち負けだけじゃないのに」
Q「どんな対処法があるでしょう?」
A「サッカーにかかわる人すべての協力が必要だ。監督、選手、チームの首脳陣にファン。もちろん、マスコミもだ。目の前の短期的な結果だけにとらわれないことが大切なんだ」
Q「ブラジル代表がW杯優勝から遠ざかっているのも、原因は同じですか?」
A「W杯に関してはそうとは限らない。7試合の短期決戦で、たった1試合の運不運で敗退もある。ただ、1982年大会でのブラジル敗退は、返す返すも残念だった。
『いくら良いプレーを見せても、所詮、優勝しなくちゃ意味がない』なんて価値観が幅を利かせるようになったからね。この影響は、ブラジルだけじゃなく、世界のサッカーにとっても大きな損失となってしまった」
(17日付エスタード紙より)