ボルソナロ大統領が公の場ではじめて、同氏のイデオロギー上のグル(師匠)と呼ばれる極右思想家オラーヴォ・デ・カルヴァーリョ氏への批判を行った。これはオラーヴォ氏が投稿した軍批判動画に応えたもので、明らかに距離を置く発言をした。この件で、大統領の次男カルロス氏を急先鋒とする政府内のオラーヴォ信奉者と、アミウトン・モウロン副大統領ら軍人閣僚との対立がさらに際立ってきている。23日付現地紙が報じている。
度重なるグルからの名指し攻撃を受けていた副大統領は、以前から「もうたくさんだ」と大統領に釘を刺していた。23日付エスタード紙によれば、サンパウロ州グアルジャーで休暇中だった大統領のユーチューブに、カルロス氏がオラーヴォ氏の軍批判映像を20日に掲載した。本人がその内容を知らないままに息子が載せたようだ。
動画いわく、「軍学校の最後の国家的文化への貢献といえば、エウクリデス・ダ・クーニャ(注=ポ語文学の傑作『オス・セルトンエス』を書いた従軍記者)だ。それ以降は染色した髪と裏返った声(注=男性の軟派傾向のこと)だ。クソだ、クソ」と罵った。
それを知った大統領はすぐに投稿を削除させ、22日に「オラーヴォ氏の最近の言動は、連邦政府の計画していることに貢献しない」と明らかに距離をおく発言を初めて行った。その発言の裏には、軍人閣僚からの圧力があったとエスタード紙はみている。
同じ22日、かねてからオラーヴォ氏から「ばか者」と呼ばれていたモウロン副大統領は、問題の動画について「もうそろそろ、得意なことだけに関して語っていただきたいものだ。たとえば占星術とか」と彼の職業の一つを挙げて皮肉った。
だが、オラーヴォ氏の動画が削除されて暴走したのがカルロス氏だ。「オラーヴォ氏は現在のブラジルにおける偉大な模範だ。そういう人を貶めるとは無知も甚だしい」とのツイートで反撃した。
さらにカルロス氏は、副大統領の言動をほめたニュースキャスターのラケル・シェへラザーデ氏のコメントを批判した上、「モウロン氏の副大統領罷免」を訴えていたマルコ・フェリシアーノ下議のツイートを取り上げ、ネット上でモウロン攻撃を繰り広げた。
これに対し、ボルソナロ氏の社会自由党(PSL)下院リーダー、デレガード・ヴァウジル下議は「イデオロギーはたくさんだ。ブラジルは前へ一歩踏みだすべき時。米国に住む未来学者と天使の話(現実的でない話の比喩)を議論するのはいい加減にするべき」と厳しく注文をつけた。同党上院リーダーで陸軍出身のマジョール・オリンビオ上議も、「副大統領も大統領と共に選挙で選ばれた。発言する権利はある」と選ばれていないグルの口出しを批判した。