ボルソナロ大統領は4月29日、サンパウロ州での農業系イベントで、「敷地内に不法侵入した人に発砲しても罪に問われないようにしたい」と発言し、物議を醸した。4月30日付現地紙が報じている。
この発言は、サンパウロ州リベイロン・プレットで行われた農業系大型イベント「アグリショウ」の開会式でのものだ。
ボルソナロ氏はそこで、「農地での暴力撲滅を助け、農民の土地と命を守らなければならない。そのために、善良な市民が犯罪者に対して抵抗した場合は例外的に、懲罰の対象外としたい」と発言した。
この発言は、「マイア下院議長は来週にも、農業生産者に対して、自宅ならびに所有地における銃所有を認めるという内容の法案を議題にのせるはずだ」と話した後に行われた。
また、大統領選に当選したのは農業生産者の強い支持に支えられてのものであったことにも言及し、「私はあなたたちの味方だ」とも語っている。
だが、刑法学者のエヴェルトン・セグーロ氏は、「刑法23条では命の危険にさらされた人のみに正当防衛が許されている。この問題に関しては、警察や司法の間での検討が必要だ」として、ボルソナロ氏の発言に疑問を呈している。
また、この発言に、「土地なし農民運動(MST)」のメンバーは不快感を示し、批判を行っている。この背景には、ボルソナロ氏が昨年の大統領選挙期間中に、MSTが行う定住運動などを「テロだ」と批判していたこともある。
セルジオ・モロ法相が提案している犯罪防止法案では、実際に銃撃などを加えられる前の発砲は、相手が攻撃を加えてくることが予測される場合と人質が危険にさらされている場合にのみ、それも警察官だけに認められている。同法案では、これらの場合の発砲を正当防衛とみなしている。
ボルソナロ大統領は先週行われたジャーナリストたちとの懇親会の席でも、この犯罪防止法案と並行した形で、今回の発言の件を入れた法案の提出を考えていることを明らかにしていた。モロ法相はこの件に関する質問をうけたが、何もコメントをしていない。
ボルソナロ大統領がこのような発言を行っている背景には、ロジェリオ・ペニーニャ下議が提出した「農場での銃所有許可」に関する法案の存在がある。大統領が農業地帯での銃所有自由化について触れた機会は、4月だけで3度あった。
大統領所属の社会自由党(PSL)やノーヴォといった党は同法案の早期承認を求めており、大統領自身も、「農業関係者の銃所有と正当防衛」に関する大統領令発令を考えているが、同法案に関しては、議会でも白熱した議論が避けられそうもない。