ニコラス・マドゥーロ氏の大統領再選、就任は無効と主張する反体制派のリーダーで、1月23日に暫定大統領就任を宣言したフアン・グアイド国民議会議長が4月30日朝、「権力の不当な侵害(usurpacao)に終止符を打つために必要な軍の支援を得た」と宣言。国民にも蜂起を呼びかけるなど、同国を巡る状況に大きな変化が起きたと同日付ブラジル国内紙サイトが報じた。
国際社会では、ブラジルや米国など、約60カ国がグアイド氏を暫定大統領と認めている。他方、マドゥーロ氏を正式な為政者と認めている国はロシアや中国、キューバ、ボリビア、メキシコなどに限られている。だが、国際社会からの圧力を受けてもマドゥーロ氏が辞任しないのは、軍やミリシア(民兵組織)の支援があるからだ。
だが、少なくとも一部の軍兵士らがグアイド氏支援を約束した事は、マドゥーロ氏の基盤が割れた事を意味する。
グアイド氏はソーシャルネットワークに、「軍の中枢部隊の支援を得た事で、マドゥーロ政権打倒のための『リベルダーデ(自由)作戦』の最終段階が始まった」「国民よ。街頭に出よ」といった文書を流した。
マドゥーロ氏はこの動きを「クーデター」と断言。「軍は忠誠を誓っている」として一部兵士の離反を批判し、「我々は勝つ」と宣言した。
ボリビアのエヴォ・モラレス大統領も「ベネズエラの国情不安の背後には米国の策略がある」との批判後、ラ米諸国に、反体制派の動きをクーデターと認め、国民が命を落とすような事態を回避させるよう要請した。
一方、米国のマイク・ポンペオ国務長官は同日朝、「グアイド暫定大統領が今日、リベルダーデ作戦開始を宣言した。米国は同国民が自由と民主主義を求める動きを全面支援する」と宣言した。
ブラジルのボルソナロ大統領は同日午後、アミウトン・モウロン副大統領や関係閣僚と会合を開き、隣国の動きを注視する方針を明らかにすると共に「ブラジルは隣国の国民側にあり、グアイド氏を支持する」と表明。モウロン副大統領は同日朝、「今日の動きはマドゥーロ氏の政権離脱を促す決定的な一歩。マドゥーロ氏退陣か、国家崩壊のどちらかだ。国の崩壊は誰も望んでいない」と語っていた。
カラカスでは、2014年に政治犯として逮捕され、15年に13年9カ月の自宅軟禁を命じられた反体制派リーダー、レオポウド・ロペス氏に恩赦が出、軍兵士によって自由の身とされたロペス氏がグアイド氏と共に空軍基地の傍らで兵士と挨拶する写真も流れた。ロペス氏も、「今こそ自由を得る時。皆で行動に出よう」と呼びかけた。
同国では各地で、体制派と反体制派が街頭での抗議行動に参加。カラカス市の空軍基地前では、グアイド氏支持派の兵士が機関銃を構え、国家警備隊などの攻撃に備える姿勢を見せる一方、反体制派の人々の群れに装甲車が乗り入れ、人々を跳ねるなど、一触即発の空気が張り詰めている。