ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル社会保障改革》公的支出削減額の予測に各銀行で開き=公平な分析と裏腹に希望的観測も

《ブラジル社会保障改革》公的支出削減額の予測に各銀行で開き=公平な分析と裏腹に希望的観測も

パウロ・ゲデス経済相(Valter Campanato/Agencia Brasil)

パウロ・ゲデス経済相(Valter Campanato/Agencia Brasil)

 【既報関連】連邦政府は、現在議論されている社会保障制度改革が成立した際の歳出削減効果を、「10年間で1兆2千億レアル」と喧伝しているが、国内各銀行や金融機関の見立ては大きく異なることが分かった。3日付ブラジル紙が報じた。
 ブラジル紙は各金融機関にアンケートを行い、「社会保障制度改革が成立する時期」と、「歳出削減効果」について質問した。
 その結果、歳出削減効果を最も高く予想したのは、「6700億~9900億レアル」と予想したイタウ・ウニバンコ社だった。同社エコノミストのペドロ・シュナイダー氏は「成立は8月」と予想した上で、「今後、改革内容が緩やかになる可能性もあるから、削減効果の予想に幅を持たせた」と語っている。
 コンサルタント会社のテンデンシアス社は、「成立は10月、削減効果は6400億レアル」と回答した。同社のエコノミスト、ファビオ・クレイン氏は、審議過程で改革内容が変わる可能性の他に、将来の経済動向の不透明性も、削減効果を変動させる要因であると指摘した。同氏はさらに、「当初は『テメル政権よりも踏み込んだ内容』と市場に評価されていたのに、1週間後にはすぐ、大統領が最低年齢の引き下げを口にした」とも語った。
 証券取引、資産管理業務を行うUBSグループのブラジル支社主席エコノミスト、トニー・ヴォウポン氏は、「削減効果が6千億レアル以下では危険だ。政府はある程度の譲歩を覚悟しているだろうが、市場としてはなるべく力強い改革(大きな削減)を期待したい」と語った。UBSは「成立時期は第3四半期、削減効果は6千億レアル~8千億レアル」と予想している。
 UBSは、「10年間で7千億レアル規模の歳出削減がなされれば、2020年はGDPが2・9%成長する。21~29年も年平均で2・5%のGDP成長が可能だろう」と試算している。
 金融関係者は、「公平にデータを分析して予想した」との体裁をとってはいるが、言葉には、希望的観測が見え隠れしている。しかし、政治リスク、地政学リスク分析を専門とするコンサル会社ユーラシアグループは、「成立は8月か9月、削減効果は4千億レアル~6千億レアル」と厳しい予想だ。

特別委員会は来週開会

 また、ブラジル紙は7日から開会予定の特別委員会の展開も予測した。49人の委員の内、25人が賛成すれば特別委通過となるが、ブラジル紙の調査によると、現時点での賛成は19人で、13人は「農村年金、受給条件厳格化、受け取り額も減少」を撤廃するなら賛成としている。反対は7人、部分的に反対は3人、中立が4人だった。残る3人は、委員会出席議員を決めていないブラジル社会党(PSB)の分だ。