ボルソナロ大統領は12日、セルジオ・モロ法相に関して、「空きができたら最高裁判事に推す」との発言を行った。その発言は、自分の政策が批判を浴び、連邦政府の思い通りにことが運ばない矢先でのことだった。13日付現地紙が報じている。
この発言は、ラジオのバンデイランテス局のジャーナリスト、ミウトン・ネーヴェス氏から受けたインタビューに応えて語ったもの。この中でボルソナロ氏は、「22年もの司法人生をやめて法相にとお願いしたのだから、神さえ許せば、最初に空席ができた時、本人との約束どおりに最高裁判事に指名しようと思っている」と語り、「そうなれば国民全てが歓迎してくれるだろう」とも語った。
最高裁で次の空席ができる場合は、2017年1月に起きたテオリ・ザヴァスキ判事急死のような事態や現職判事の突然の辞任でもない限り、2020年11月1日のセウソ・デ・メロ判事の定年が最速となる。また、仮にこれを逃しても、2021年7月12日のマルコ・アウレーリオ判事の定年が控えている。
モロ判事は、ラヴァ・ジャット作戦の担当判事であったという印象も手伝い、現ボルソナロ政権において最も人気の大臣であることは確かだ。
だが、連邦政府の現職法相が、その政権の大統領がまだ在任中に最高裁判事に転じるのは、「連邦政府に有利になるのでは」と反発の声も起こりやすい。事実、テメル政権時代の法相だったアレッシャンドレ・デ・モラエス氏が最高裁判事に指名された時も、最高裁判事への就任承認には不可欠の上院でのサバチーナ(口頭試問)での結論が出るまでに、12時間を要したほどだった。
また、モロ氏の場合、ラヴァ・ジャット作戦の判事から法相に就任する際も、「判事の政治的中立性が失われるのでは」と批判を浴びている。この法相就任は、従来の法務省と治安省を統合した「スーパー大臣」としての待遇だった。
また、今回のボルソナロ大統領の発言は、9日に開催された両院特別委員会において、モロ法相が法務省傘下に置いておくことを強く望んだ金融活動管理審議会(Coaf)が、昨年までの管轄だった財務省(現在は経済省)の管轄下に戻された直後に行われている。同日の特別委員会でも、委員の中からは「モロ氏への権力集中」を嫌う声があげられていた。
他方、ボルソナロ氏自身も、連邦政府の法案が下院で敗北する事態が相次いでいる。さらに、7日に署名した銃携行に関する大統領令が不評で、議会などから違憲との声が出ている上、10日には最高裁のローザ・ウェベル判事から、5日以内に内容の説明を求められるなど、苦しい立場にもあった。
なお、モロ判事は13日朝、「法相就任を打診された時には、最高裁判事に指名するという特別な約束なぞなかった」と語るなど、見解の相違も明らかになっている。