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カンヌ映画祭=メンドンサ・フィーリョの新作が好評=3年前にジウマ大統領罷免反対デモで話題の監督

カンヌ国際映画祭に集まった、「バクラウ」製作関係者達(15日付オ・グローボ紙サイトの記事の一部)

カンヌ国際映画祭に集まった、「バクラウ」製作関係者達(15日付オ・グローボ紙サイトの記事の一部)

 現在開催中の第72回カンヌ国際映画際で15日、ブラジルからのコンペティション参加作品で、3年前の同祭のレッド・カーペットでの抗議行動で国際的に有名になったクレベル・メンドンサ・フィーリョ監督の新作「バクラウ」が上映され、好評を博している。
 メンドンサ・フィーリョ監督は2016年、「アクエリアス」でカンヌのコンペティションに参加したが、その時は、作品そのものよりも、レッド・カーペットで監督、出演者総勢で行った、「ジウマ大統領罷免反対デモ」の方が国際的な話題となった。この当時、ジウマ大統領は下院で罷免が承認され、上院でも罷免審議を受け付ける(継続する)と決定したことで、大統領を停職処分(8月に正式に罷免)となっていた。
 ただ、「アクエリアス」はカンヌでの入賞こそなかったものの、作品の評価は高く、映画祭によっては、主演を務めたベテラン女優、ソニア・ブラガが主演女優賞を受賞するものも見られた。
 それから3年、メンドンサ・フィーリョは新作「バクラウ」を引っさげてカンヌに戻ってきた。
 前作「アクエリアス」が、ペルナンブッコ州に住む音楽評論家の女性が古くからの自宅の立ち退きに反抗する社会的なストーリーだったのに対し、「バクラウ」はブラジルの寒村にドキュメンタリーを撮影に来た集団が、この田舎の人たちの異様な雰囲気に恐怖を感じはじめ、やがて生き残りをかけて戦うことになるホラー、サスペンス系の映画だ。
 今回のコンペティション作品の中ではかなり早い段階で公開された「バクラウ」は、観客にはおおむね好評だった。批評家の評価も、イギリスのガーディアン紙で著名映画評論家のピーター・ブラッドショー氏は、「アレハンドロ・ホドロフスキーやクリント・イーストウッドの作品を思い出させる。奇妙な映画だが、他の何物にも替えられない独自性がある」と評価した。
 また、アメリカのネットのエンターテイメント・メディア「ザ・ラップ」は、「田舎の現実に対する現在の政府の無防備さや、アメリカが世界で本来果たすべき役割を果たしていないことへの警鐘とみることができる」と評した。
 また、アメリカの映画サイト「インディ・ワイアー」は、「黒澤明の『七人の侍』が、カルト・ホラー監督イーライ・ロスと混ざったような感じだ」と評している。
 奇しくも今回の「バクラウ」のカンヌでの上映は、ブラジルでの連邦大学などへの支出削減反対デモの最中に行われたが、メンドンサ・フィーリョは抗議活動は行わなかった。だが、「(抗議行動を)全面的に支持したい」と語っている。(15日付オ・グローボ紙サイトより)