サンパウロ市リベルダーデ区のトマス・ゴンザガ街で2011年に開店した日本食レストラン「伴」が、今月23日午後10時半を以って閉店した。
店主の原口政信さん(66、宮崎県)は「昨年の11月13日に家主との契約は終わったが、何も言われなかったので経営を続けていた。それが一カ月前、家主から『ここにプレジオ(建物)を建てたい』と言われた。急だったので、常連客にしかお知らせできていない」と語る。
「伴」の経営は最初の2年間程は順調だったが、4~5年前からトマス・ゴンザガ街の人通りが少なくなり、客足が減少した。原口さんは「日本食店が他の場所にも出来、わざわざリベルダーデまで食べに来る人は減った」とし、3年前から店の売却を考えていたという。
しかし、常連客の中には開店時から毎週店に通い続けている人もおり「伴はお客さんに恵まれていた」と原口さん。
開店時から毎週通っていた細井ジャイメさん(71、三世)は「日本食レストランの中でも、原口さんの味が一番好き。一週間前に閉店の話を聞き、味わいにきた」と語る。特に銀鱈が好きで、閉店日にも味わった。
「僕はじいちゃん、ばあちゃんに育てられて、大晦日と元旦にはお雑煮を作ってもらった」と細井さん。そのことを原口さんに話すと、1月に訪れた時にはお雑煮を作ってくれたという。そういった客への気遣いからも、「伴」は愛された。
閉店日前の二日間は客が多く、忙しくなった。「皆さん、伴の料理を『美味しい』と食べて名残惜しそうにしていた。それだけ伴を愛して下さったということ」と原口さんは感謝を口にする。
今後の予定は「まだ決っていない」としつつも、「また皆さんに日本食を食べてもらえるように、これからもがんばります」と抱負を語った。
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「開店当初から『伴』で働いています」と話すのは、柳池スザナ明美さん(37、三世)。日本食レストラン「伴」には約8年間務めた。「常連客の方々は『寂しいね』と悲しんでくださり、また『新しくお店を出したら是非教えてください』と言われました」と語る。柳池さんも伴の閉店を誰より悲しむ一人。「従業員とも仲良く楽しかった。開店も閉店も手伝うって辛いですよ」と切ない表情を浮かべる。集合写真を撮影する際、皆で仲良く肩を並べ、閉店を惜しんでいた。原口さんには是非新しいレストランを開き、活躍してほしいところ。